創作小説の森

□グリーディア物語 聖獣の章「雪色の夢」
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グリーディア光国。

緑溢れる楽園と称されるこの国は、また、四季折々の移ろいも美しいと言われている。
しかし今は、空は薄墨色の雲を貼り付けて、太陽の恵みを妨げている。
吹く風に色づき落ちた葉がカサカサと乾いた音をたてて転がっていった。
季節はすっかり冬へと変化しているのである。
街より少し外れた所に位置する深い森も例外ではなく、
国を取り囲む山並みから吹き降ろす風を受けていた。




 「よいしょ。」
小さな掛け声と共に、薪を抱えた少女が物置小屋から出てきた。
そして、小屋の前に置いた台車の上に積み重ねる。
 「これで足りるかな?」
積まれた薪を見ながらちょこっと首を傾げた。
人のそれとは異なる耳が伏せられる。

少女の名は「ユニカ」
獣人族の少女である。
半年以上前に、旅の途中で母親を失った彼女は、
この森に住む「自称」魔導師&錬金術師の男「エバール」に引き取られて暮らしていた。
森奥の一軒家の主であるエバールは、
まだ幼いユニカに家事一般等の仕事をさせるつもりで引き取った覚えは毛頭無かった。

だが、いかんせん気楽でマイペースな「自称」魔導師の男である。
余りの生活能力の欠如に、いつのまにかしっかり者の養い子が家事一般を行なうようになっていた。

そして今日も、家主が街へと出かけていった後、少女は家事に勤しんでいるのである。
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