アリスと世界
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「…………ねえ、」
今日こそは何か言わなければなるまい。
「なぁに?お姉さん」
「どうしたの、お姉さん」
手を止めてこちらをみるディーとダム。
そう。
今日こそは、言わなければ。
「どうかしたか、お嬢さん」
何事もないように紅茶を飲むブラッド。
そう、
「ん?今日のにんじんケーキは美味しくなかったか??
新作だったんだけどな…」
拳銃を持つ手を耳と一緒に下げて悲しむエリオット。
今日こそは―――――――――
「って、ぁあッ!
なんでこう、毎日毎日喧嘩しなくちゃ日々を送れないわけ、あんた達はっ!?」
おちおち食事も楽しめやしないッ
「毎日こうじゃ、気が滅入るわ!」
「だって、ひよこウサギ」
「静かにしろよ、バカウサギ」
口々に罵る双子。
「んだと!
テメー等、今日という今日は許さねえ!」
それに反応して再び拳銃を持ち出すエリオット。
「…ブラッド、なんとか言って」
「今日も紅茶が美味いな、お嬢さん」
……もうサイアク。
+++++
「最近お姉さんの元気がないね、兄弟」
「そうだね、兄弟。どうしたんだろうね」
「ひよこウサギのせいだね、兄弟」
「そうだね、兄弟」
「………」
「………」
「「 お姉さんの為なら… 」」
+++++
「……ねえ、どうして今日は静かなの??
二人ともお腹痛いの??」
心配だ。
いつも騒いでいるだけに、急に静かになられたらそりゃあ心配だ。
特に、この二人の場合。
「なんでもないよ,お姉さん」
「そうだよ、お姉さん。僕たちはただ、ご飯を食べてるんだよ」
「う…、うん…」
ソレが心配なんだけど…
急にどうしたのかしら…
+++++
「ディー、ダム!」
私はご飯を食べ終わった後、どうしても気になったので聞いてみることにした。
「なぁに、お姉さん」
「どうしたの、お姉さん」
「だって…」
なにか、あったのだろうか。
余所者である私には、話せない、なにか??
いつも嫌なくらい騒いでいるのが日常だったから、逆に静かだとここが違うところなのかと思えてしまう。
「どうして、今日は静かだったの?」
すると、二人はきょとんとした顔で、
そして、さも当たり前のように答えた。
「お姉さんが、元気無かったから…」
「僕たちのせいでしょ??」
悲しそうな顔。
外見は大人だったり子供だったりするけど、やっぱりまだまだ中身は子供なんだな、と改めて感じる。
「大丈夫、ありがとう」
二人の頭に手をおく
「私は大丈夫だから、二人はいつも通りの方が私は好きだな」
それが、大変な事だとしても。
私は、いつもの二人の方が好き。
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「………ちょっと」
「なぁに?お姉さん」
「どうしたの、お姉さん」
手を止めてこちらをみるディーとダム。
「どうかしたか、お嬢さん」
何事もないように紅茶を飲むブラッド。
「ん?今日のにんじんケーキは美味しくなかったか??
新作だったんだけどな…」
拳銃を持つ手を耳と一緒に下げて悲しむエリオット。
「静かすぎるのも怖いけど、喧嘩は止めなさーい!」
それでも
この毎日が、
いつまでも、
続くといいな。
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椿様リクエスト