アリスと世界

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――目が痛い。


「…ん、」


目を開けるとそこは


「あら、目が覚めたのね」


現実だった――…







「ね…姉さん…」

「あら、なあにアリスったら。
目が覚めた途端、驚くなんて」


…それも、そうだ。
これじゃあ姉さんに失礼だわ。


「ただいま、姉さん」

「あら、どうしたの、アリス。ただいま、なんて…
おはようじゃない」


優雅に笑う姉さん。

そうだ。
なんで「ただいま」なんて言ったんだろう……
ただ、目が覚めただけなのに。


――ほんとうに、「ただ目が覚めただけ」…??


「あらあら…
アリス、そういう時はまずコップ一杯の水を飲むといいわね」

「あっ…、姉さん、私自分で取ってくるわ」


立ち上がろうとする姉さんに、私は言葉で遮る。


「ふふ、いいのよアリス。私が取ってくるわ」


私を姉さんの優しい微笑みで止め、家へ戻ってゆく。


「…………」


本当に、どうしたというのだろう。

ここが、現実。

それは分かってる。
それに、現実以外に何がある??
夢のみすぎで頭がおかしくなったのだろうか。


―――リス――――


頭に響く、何処かで聞いた声。


――ア――――ス―


「誰っ!?」


――リス―――――


「誰なのっ!?」


何度も呼ばれる私の名前。

次第に"ソレ"は近づいてきて――…


「アリスっ!!!」


遂には、私の後ろから聞こえた。


「ああっ!
無事だったんですね、アリス!」


良かった、と私に伸ばされる手は、しかし見覚えはなくて。


「…アリス??」


私を呼ぶその声にも、やはり聞き覚えがなくて。


「貴方は…誰??」


ズキン


「―――ッ!!?」


頭痛が、する。

頭が―――割れる!


「アリス!アリス!!」


私の異変を感じ取ったのか、目の前の彼は狼狽え始める。


「ぅ…あ……ペー…ター…??」

「――っ!アリス!」


そうだ
思い出した。

彼はペーター=ホワイト。
私は夢から覚めて現実に……


「ペーター、どうして貴方がいるの!?
私は―――

――私は現実に戻れたんじゃないの!?」


訴える私に、しかし彼はゆっくり首を振る

もちろん、横にだ。


「アリス、聞いて下さい。
ここは貴女の望む世界じゃない、貴女を苦しめるだけの世界だ。
僕は、貴女を傷付けたくない。」


でも、それでも…


「ここは私のいるべき世界なんでしょう?」


私は、私のいるべき世界にいたい。


「お願いします、アリス。
僕は、貴女を傷付けたくないんです…」


初めてみる、ペーターのこんな表情。

私のいるべき世界はここ。
でも、ペーターは違う。


「…ペーターとも会えなくなっちゃう、の…??」


首を振るペーター
もちろん、縦に振った。


「……、姉さんが戻ってくるわ」

「―――アリス!
お願いです、僕の側でなくてもいい!
僕と一緒に戻って――」


ペーターの言葉の続きを押し留める。
そっと、唇を重ねて。


「だから、連れていって。姉さんが戻ってくるまでに。
私の決心が、緩んじゃう前に」


たとえ夢の世界でも、そこが"私の夢の世界"ならきっと大丈夫。
私の居場所が、いるべき場所がきっとある。


だから、


「連れていって、ペーター。
私を、私のいるべき場所へ」













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十六夜様リクエスト
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