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□森のおともだち2
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「ごう、まだかよ?」

うさたくは池の側でどすりと座り込んでいるくまごうに言いました。
くまごうの隣りには、くまごうの身体には不釣り合いなほど小さなバケツが置いてあります。
さっきから、くまごうはじっと座り込んで今日のお昼ご飯となる魚を釣っています。
しかし、一匹も釣れません。
うさたくは、山に入りたくさんのノイチゴと、どんぐりを採ってきました。
うさたくは早くご飯が食べたくてしかたありません。
自分で集めたノイチゴやどんぐりを手にとり、匂いを嗅いだりいています。

『…腹減ったなぁ』

うさたくのお腹が大きな音を立てました。
ぐるる
ぐるる

「ごう!」

「なんじゃ、たくみ?」

くまごうは木で作った釣竿を手に持ち、池で魚の動きを伺いながら言いました。
うさたくは、少しムッとしました。
さっきからくまごうが構ってくれないことにも、少し、ほんの少しですが…怒っていたのです。
こんなにたくさんのおいしそうなノイチゴを採ってきたのに、何も言ってくれない。

「魚、もういいじゃん。早く家帰って食おうぜ」

「おえん。たくみは、魚嫌いかもしれんけどたまには動物性たんぱく質もとらんといけん!」

「でも、釣れないじゃん」

「もうちょっと待ったら、釣れるかもしれんじゃろ?」

うさたくは、怒りに毛がしゅっと逆立ってしまいます。

「ごうの、わからずや」

そう言って、せっかく集めたどんぐりの一つを手に取り大きなくまごうの背中へ投げ付けます。

「わからずや、わからずや」

そう言って、うさたくは何個も何個もどんぐりを投げます。
これにはさすがのくまごうも怒ったのか、釣竿を置き、のしのしとうさたくの方に近付いてきました。
うさたくの前には、近付いてきたくまごうの大きな大きな影ができています。
怒られるかもしれない、そう思いうさたくはぎゅっと目を瞑りました。

ぽふ
ぽふ

しかし、次の瞬間、うさたくが頭の上に感じたのはふわふわとした毛の感触でした。
くまごうの大きな手で、頭を撫でられていたのです。
うさたくがそっと目を開けると、そこにはにこりと笑うくまごうの顔。

「こんなに採ってきてくれたんじゃな、ありがとうな」

そのまま何度も何度もくまごうはうさたくの頭を撫でてくれます。
その行為に、うさたくのふてくされていた気持ちも納まっていきました。
その証拠に、さっきまで怒りのためにぴんと立っていた耳も今ではぺたりと頭についています。
目も細めて、うさたくはとても嬉しそうです。

「べつに…」

うさたくがぽそりと小さな声で言うと、くまごうはさらににっこりと笑い、うさたくを抱き上げました。
小さなうさたくはくまごうに軽々と持ち上げられます。

「うわっ…!」

落ちそうになるのを怖がり、うさたくはくまごうの耳をぎゅっと握り締めます。

「たくみ、もうちょっと待っといてくれな」

そう言ってくまごうはバケツの近くまで移動すると、うさたくを膝にのせ、釣竿を握り直しました。

「うん」

うさたくはくまごうのふかふかとした胸に頭をあずけ、一緒に釣竿を握りました。



END


まさかの森のお友達リターンです。

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