ハツカノ

□ハツカノ0
1ページ/1ページ


まっすぐと、背筋の伸びた華奢な背中に目をやる。
上から糸でひっぱられているかのように、まっすぐに天へ伸びている。

綺麗じゃな…

他の人とは、混ざらない鋭利な雰囲気を持っている女の子。

豪は新田男子校の入学式のため、初めて新田駅を利用した。
今までほとんど電車を利用したことがないため、自分でも少し落ち着きがないとは思うがキョロキョロと辺りを見回してしまう。
同じ制服を着た学生。
スーツを着たサラリーマン。
奇抜な服装をしている大学生。
たくさんの人がいるが、どの人にも共通して言えることは「眠そう」ということだ。
月曜日の朝。
一週間のうちで最もしんどい時間でもある。
豪も例外ではなく、くわぁ、と一つ欠伸をついた。
眠い目を擦りながら、反対側のホームに目をやる。

瞬間、目を奪われるものがあった。

風がさぁ、と顔を撫でる。
濃紺のセーラー服に身を包んだ華奢な背中。
栗色の髪が朝の光に反射してきらきらとなびくのが綺麗だ。

『綺麗な人じゃな…』


顔とかそういった外見のものではなく、立ち振る舞いが、雰囲気が、美しい人というものが世の中にいることを豪は知っていた。
そしてそれができる人の方が、外見が美しい人よりも少ないことも。

また風がさぁ、と豪の顔を撫でる。
春の風が桜を運び、外を桃色に色付かせた。


END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ