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□神様のIt
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「豪、なんでここの主語がItなんだ?」
「どこじゃ…あぁ、神様のItじゃな」
「神様のIt?」
「天候・距離・明暗・時間はItで書くんじゃ。そういうんは、神様しか分からんじゃろ?じゃから、神様のItって言うんじゃ。この間やったじゃろが」
「ふーん…」
「くくくッ…」
習った時のことを思い出し、堪え切れずに笑ってしまった。
「…いきなり笑い出してどうしたんだよ?」
怪訝そうな顔で巧が尋ねてくる。
「いやな、この話聞いた時、巧の行動もItで表すべきじゃって思ったんじゃ」
「はぁ?なんでだよ?」
「じゃって、巧の行動は誰にも予測できんし、誰も巧を動かすことなんかできんじゃろ?」
巧は何かを考え込むように眉間に皺を寄せた。
俺は、宿題を解き始めようと問題集に視線を向ける。
「…そんなことないぜ」
巧が呟いた。
予想もしない言葉に、間の抜けた声が出る。
「はぁ?誰が巧を動かせるんじゃ?」
「豪」
「なんじゃ?」
「だから、お前だけだって」
一瞬、息を吸うのを忘れた。
「さっさと範囲までやってキャッチしようぜ」
巧のその言葉で、我に帰る。
唾を飲み込むために、ゴクリと大きく喉が鳴った。
これだから、原田 巧は予想できない。
手に負えない。
神様さえもわからない。
END