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□rainy day
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雨が降ると、どことなく気分は憂鬱だ。
だって、野球ができないから。



「野球できんくても、他にすることあるじゃろ?」

豪の部屋。ベッドを我がもの顔で占領して雑誌を読んでいた俺は、豪の言葉に顔をあげる。
野球バカの豪から出るとは思えない台詞を聞いた。
興味を引かれ、先を促す。

「たとえば?」

「たとえば…」

豪が俺の顎を掴み、顔を軽く引き上げる。
目をつぶる暇もなく、豪の唇が触れた。
唇に触れた後、瞼や頬、首筋と豪はくまなく唇を落としてくる。
そして、少し照れたようにして顔を上げた。

「たとえば、キスするとか…」

「そういうのは、行動する前に言えよ」

豪の照れた情けない表情に自然と笑みがこぼれる。

「くくくっ…しかも、それって豪がしたいだけだろ」

そう言うと、豪は赤い頬を少し膨らませた。

『あぁ、拗ねちゃったかな』

そう思い、豪の顔を覗きこむ。すると、黒目がちのぱちりとした瞳が俺を見つめた。かっこいいとは言えない顔。
でも、なんだかいいのだ。
見つめられると、ドキリとする。
それは、俺が豪を好きだから。
ドキリは好きの証し。
好きの証しは俺をどんどん強欲にする。
キスしたい、つながりたい。
豪が欲しい。
さっきのキスの感触が思い出される。
身体が豪を求めてほてる。
熱い息をはきだし、言葉を紡いだ。

「…俺も思いついたぜ」

豪が顔をあげる。もう、頬は赤くなく拗ねてもいなかった。

「たとえば、豪とセックスするとか?」

そう言って、にやりと笑った。


END

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