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豪は笑わなくなった。
寡黙になった。
あの、優しい男から笑顔を奪ったのは俺だ。

「お前のこと見てると時々ほんまにムカつく」

予想以上に悲しみなんて全くなかった。
むしろ、黒い喜びが込み上げて来る。

「…なに、笑っとるんじゃ?」

豪が恐ろしいものでも見たような顔で聞いてきた。
声もかすれている。
俺は笑っていたのか?
気付いていなかった。
でも、仕方ないじゃないか。
嬉しいんだから。
豪の好きには、たくさんの人がいる。
でも、嫌いには俺しかいない。
これで喜びをかんじないはずないだろう。
豪の嫌いは好きなんて言葉よりもずっと重いのだ。
好きになってもらおうなんて思わない。
好きなんて甘い感情で、俺を思ってほしくない。
好きよりも、痛くて辛い。
憎しみで俺を思い出せよ、豪。
許してもらおうなんて思わない。
許されたいなんて思わない。
俺を一生憎み続ければいい。


END

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