rise a child with love

□rise a child with love
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ご注意

このお話しは、豪は幼稚園の先生で巧は年少組の園児という設定です。
それでも大丈夫な方だけお読みください。




「ごぉちゃん」

振り向くと、原田 巧くんがとてとてと危なげな足取りで走ってくる。巧くんは俺が務める新田東幼稚園の年少組の男の子だ。

「どうしたんじゃ、巧くん?お昼寝の時間じゃったじゃろ?」

膝をつき巧くんの頭を撫でてやる。
すると、巧くんは持っていた大きなぬいぐるみをぎゅっと抱き締めた。

「これ、ごぉちゃんににてるでしょ?」

豪の質問には全く関係がないと思われる言葉が、巧くんの口から出てきた。
巧くんが両腕で抱えるように持っているぬいぐるみは、テレビで見たことがある。
確か、女子高生に人気の「カピバラさん」というキャラクターのぬいぐるみだ。

「カピュ…カピュバ…カピュ」

巧くんは必死でそのキャラクターの名前を口にしようとしているが、なかなか上手くいかない。
下を向き、少し首を傾げている。

『今、絶対なんだったけ?って思っとるんじゃろうなぁ』

あまりのかわいらしさに、思わず笑みがこぼれた。
子供は動作の一つ一つが本当に愛らしい。
贔屓しているわけではないが、巧くんは年少組の中でもピカイチのかわいらしさだ。

「巧くん、カピバラさんじゃろ?」

「!そう、それ!カピュバラたん」

巧くんがぱっと顔を上げた。
名前が分かったことに興奮し、さらにぎゅっと力を入れてぬいぐるみを握る。
俺に似ているというカピバラさんは窒息死しそうな勢いだ。

「それがどうしたんじゃ?」

「あのね、カピュバラたん、ごぉちゃんににてるから、おひるねのときいっしょねようとしたの」

「うん?」

「でもね、やっぱりほんもののごぉちゃんがいいの。ごぉちゃんじゃないとねむれないの」

カピバラさんを片手に抱え直し、もう片方の手で俺のエプロンの裾をひっぱった。

「だから、ごぉちゃん!いっしょねよ!」

そう言って、巧くんはエプロンを掴んでいた手を俺の右手に移行させ、ぐいぐいと引っ張る。

「巧くんは甘えたさんじゃなぁ〜」

締まりのない顔で笑いながらそう言い、巧くんに引っ張られるように教員室を後にする。

『ほんまに、かわいいのぉ』

とてとてと歩く巧くんの後ろ姿を見ながら、締まりのない頬を押さえた。



その後、巧くんは二人の豪ちゃんに囲まれてスヤスヤと眠りましたとさ。




END

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