rise a child with love

□rise a child with love5
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「ごうちゃ、ごうちゃん」

可愛らしい声がした、
と思った瞬間、背中に凄い衝撃。

「わっ!」

中腰になっていた俺はそのまま前に転びそうになる。
よたよたとした俺を後ろでくすくす笑っているのが、俺のクラスの原田巧。

「ごおちゃんの、のろま」

やっとこさ体勢を立て直し、後ろを振り向くと天使のような笑顔。

「あのなぁ、突然後ろから来られたらびっくりするじゃろ?」

「ごおちゃんが、のろまだからでしょ」

またくすくすと笑い、毒を吐く。
天使を訂正、ほんま小悪魔。
でもそれでもかわいいと思ってしまうから、ほんとに重症だ。

「そんな急いで来てどうしたんじゃ?」

「えとねー」

ふふっ、と笑い巧が右手を突き出した。
不思議に思いつつも両手を巧の右手の下に持っていく。
すると、コロンと何かが掌に落ちてきた。

「ごおちゃんに、あげる」

それはおもちゃの指輪。
大きなキラキラ光る石がついていて、女の子がもらったらさぞ嬉しいんじゃないだろうか。
しかしながら、残念なことに俺は男だ。
巧の意図が理解できない。
こほん。
小さな咳払いが聞こえた。

「ながくらごおさん」

「はい?」

「おれが、しあわせにするから」

「うん…?」

「おっきくなったら、けっこんしてください」

「へ?」

指輪から視線を上げ巧を見ると、巧は瞳を輝かせこっちを見ている。
なるほど。
これはプロポーズなのか。
俺は人生で初めてプロポーズをされたのか。

「へんじは?」

巧のにこにこした笑顔に、笑いが込み上げてくる。

「ねぇ、へんじは?」

「…ええよ、巧がおっきくなったらな」

ほんとに、巧には敵わない。

「やったぁ」

巧は軽く飛び跳ね、俺の首に腕を回した。

「ごおちゃん、だあいすき」

「はいはい、俺も巧のこと好きじゃ」

巧の背中を撫で、指輪をポケットに閉まった。


この約束が果たされるのは、10年先のお話し。



END

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