ハツカノ

□ハツカノ6
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緊張して、上手く喋れなくても、豪に伝えたいのだ。

「でも、なんかわかんないけど、緊張して、上手く喋れないんだ」

顔が熱い。
自分の言いたいことがわからない。
なんで豪が好きなのに、豪と一緒にいると上手く喋れないんだろう。
なんでこんなに緊張するんだろう。
赤い顔で豪を見る。
少し高い位置にある顔がこれ以上ないほど真っ赤になった。

「やばい…」

豪が口元を手で押さえる。
それ以降何も言わない豪に不安が募った。
やはり、伝わらなかったのだろうか。
豪に呼び掛けようとしたすこし先に、豪が口を開いた。

「すっげぇ、告白…」

「なっ…!!」

豪の言った言葉の意味がわからない。
なんで豪と喋ることが緊張すると、豪のことが好きということになるんだ。
好きならもっと喋りたくて、すらすら喋れるんじゃないのか。

「原田さん、たぶん、それ俺のこと意識してるからじゃ」

「意識?」

「つまり、好きってことだと思う」

「好きだと、意識して喋れなくなるのか?」

「うん、じゃって、俺も原田さんのこと意識してうまく喋れんもん」

豪の言葉に笑みが零れる。
うまく喋れないと言っても、豪は普段の巧の何倍も饒舌だし、自然な態度だった気がしたからだ。

「本当に?」

「うん、本当に」

赤い顔をお互い見合わせ、くすくすと笑った。
暖かな日差しが気持ち良くて、二人でゆっくりと歩いた。




END
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