われらが英雄!

□十九死、戦い
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ヒ「…ついに会えたな」



冥界の中に立つ敵――バラクーダをヒーローは睨みつける。

青い秘石を片手に、褐色の魔人は薄く笑った。


バ「派手な来訪だな。冥界の流儀に合わせてくれたのか?天帝…」

ヒ「バラクーダぁああ!!

バ「……初めて会った時と同じ、まっすぐな目だ」

ドンッ!

ヒ「がっ…」


一直線に向かってくるヒーローを殴り飛ばす。

勢いを削がれ、二、三歩後退した青年を見てバラクーダがまた薄い笑みを浮かべた。


バ「正面から直進して来る獣は、真っ向から叩きのめすと瞬時に戦意を失う。
腕に自信がある者なら尚更だろう」

ヒ「戦意を失うだと?ふざけるな!兄達がそれぞれの命を賭してオレをここまで来させたんだ!

何があろうと貴様を倒す!!


聖王剣を強く握り、ヒーローは袈裟懸けにバラクーダへと斬りつける。


しかし。



ピキ…

バ「…これが冥王を斬った剣か。脆いな」



あまりにも予想外のことにヒーローの動きと思考は一瞬止まった。


あの、聖王剣が。

シルヴィスの魔王の目をも斬った超神器が、折られた。


ただバラクーダの掌ひとつで。


目を見開いたヒーローの顎を掴み、己に引き寄せてバラクーダがその目を覗き込む。

そうか、まだか。


バ「天帝…兄達の屍を越えて来たと言ったな!

足りんな…

オレと戦いたいのならば、父親を殺せ!」


ザッ!

ヒ「パーパ!!……な!?」


懐かしい人影がすぐ近くの地面に降り立つ。

駆け寄ったヒーローは、父の腕が…腹が、顔つきが変わっていくのを目にしてしまった。


ヒ「貴様ッ…パーパに何をしたッツ!」

バ「忍――…といったな、お前の2番目の兄は。魔眼の魔力を抑えて冥界に居たとは、大した忍耐強さだ」

ヒ「まさか…」


シンタローの体を覆う包帯が破れ、魔王の眼が露わになる。

魔王の眼の封印が解けるにつれ、更にシンタローの変化が進む。


バ「子を想う父の愛というやつか?シルヴィスが作り出した魔層圏内にいた時は奴もさぞ辛かったろう。
人間の身でありながらよくここまで耐えたものだ。だが、あと数分もせぬうちに魔力に蝕まれ…


お前の父は完全に魔人化する!」
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