街道脇の茶屋
□太陽の下へ
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「タイ?虎じゃなくて?」
「タイだ」
聖地・マリージョアに立ち並ぶ天竜人の街。
一軒一軒が過剰に大きく、贅を凝らした街である。
その内のとある屋敷、地下にある倉庫で、魚人タイガー・フィッシャーは数個の木箱を運びながら奴隷の1人と言葉を交わしていた。
「ふうん、だから体が赤いんだ」
「…気持ち悪ィだろ」
「何で?」
「そりゃお前、」
言いかけて、タイガーは今更ながら彼女の名前を知らない事に気付いた。
それを察したのか同じ奴隷の娘はふわんと笑う。
「私は「コラそこォ!私語をするんじゃない!」…すみません」
しまった、もう戻ってきたか。
内心でタイガーは舌打ちする。
ここの倉庫は広い。
見張りが往復するだけでも結構な時間がかかる。
だが、彼等を怒鳴りつけた男は他の見張りに比べても異様に歩くスピードが速いのだ。
失念していた。
「しっかり働け奴隷ども!手を休めたらどうなるか分かってるな!!」
バシッ!
鞭が唸る。
無言で手を動かし始める娘に倣い、彼もまた木箱の移動を再開した。