呪泉郷★斬魄刀★陽海
□夜桜
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月の明かりに照らされて、仄かに映える夜桜。
桜の側にある縁側では、静かに腰かけてそれを眺める一人の女性。
「緋真…」
緋真と呼ばれた女性は、振り向く。
「白哉様…」
四大貴族の一、朽木家の当主にして緋真の夫…朽木 白哉。
「こんな夜中に、こんなとこに居て何をしている?」
白哉はふと目が覚め、側に緋真がいないことに心配して探しに来たのだ。
それを緋真は感じた。
「すみません。何だか眠れなくて…。ふと夜の桜を眺めたいと、思い…」
「夜桜か…」
「白哉様は夜の桜はお好きですか?」
白哉は緋真の隣に座った。
「桜は蕾から満開に至り、そして儚く散る姿も全て美しいと思う。夜の桜も悪くない。」
…………。
暫く静かな時が流れた。
「白哉様。」
「?」
「お花見しません?お酒を召しながら、二人きりで…」
「床に戻らねば風邪引くかもしれぬぞ?」
白哉は緋真の身体をいたわる。
「平気です。白哉様の隣は温かいですから。」
「そうか…」
「白哉様が就寝なさりたいのでしたら、すみません。迷惑でなければ…」
緋真はわがままを言ってしまったかなと、言葉を付け足した。
「案ずるな。私なら大丈夫だ。酒を持ってこようか…」
緋真が『それは私が』と、引き止める間もなく白哉は居なくなった。