英徳学園
□七夕の恋人
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お風呂上がりに、濡れた髪の毛を乾かしながら窓辺に寄り添い、夜空を見上げた。
道明寺がニューヨークに行ってから、2年目の夏。
星が煌めく7月の始め。
「もうすぐ七夕ねぇ。今日は綺麗な星空だこと」
隣に母が。
「七夕かぁ。…ママは何か願い事あったりするの?」
「そうねぇ。こんなボロアパートから早く抜けて、一戸建てに住みたいかな。夢のまた夢だけどね。」
苦笑して向けた視線は父に。
父は母の願い事を聞いて、笑いながら誤魔化している。
「七夕ってさ、織姫と彦星が年に一度だけ会える大切な日なんだよね」
弟が期末試験の勉強に励みながら言った。
〈年に一度だけかぁ。それだけでも、今のあたしには羨ましいかも〉
約4ヶ月前にパリにて会ったというのに、織姫よりよほど寂しがりなのかもね。
1年も恋人を待ったあげく、1日だけの幸せを噛みしめてまた1年後まで健気に待つ二人。
あたしたちの場合は1年経っても会えるとは限らず、これからだと2年数ヵ月後の、再会の約束した日まで会えないかもしれない。
そう思うと、今は織姫と彦星が羨ましく思えてくるの。