禁書CP3

□雨の中の笑み
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彼はとても穏やかな笑みを見せる。
彼女の前だけで。






「ステイル!ちょっと待ってかもー!」


部屋に大声が響き渡った。
しかし、もう十何回にもなる大声。さすがに慣れて、当麻は小さく微笑んだだけだった。


「・・・はぁ、仕方がないな・・・。」


ステイルのため息混じりのこの言葉も何十回目。
久し振りに遊びに来たステイルは、持ち込んできたチェスでインデックスと遊んでいた。
1年ごとに記憶を消される、それから解放されたインデックス。
彼女に楽しい事、面白い事、どんどん教えたいのだろう。
もしかしたら、昔に一緒にやったのかもしれない。
その時、とても楽しかったのだろう。
もう一度その楽しみを。
そう思って、ステイルはチェスを持ってきたのかもしれない。
インデックスの楽しそうな声が聞こえてくる。
当麻は皿を洗いながら、チラリと彼らを振り返った。
そして、ピクリッと動きを止めてしまった。
当麻の目に飛び込んできたのは、笑み。
ステイルが浮かべていた笑み。
とても穏やかな笑みだった。


「・・・。」


当麻は少し沈痛な気持ちになり、のろのろと皿洗いに戻った。
決して当麻には見せた事のない、これからも見せないであろう笑み。
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