禁書CP3

□初めの一歩
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美琴は黒子、初春と共に喫茶店で午後のお茶会をしていた。
ダージリンを優雅に飲むのは美琴。
黒子はケーキとアールグレイのアイスティー。
特大パフェはもちろん初春だ。
後輩2人が風紀委員の話で盛り上がってしまい、暇を持て余した美琴はふと窓の外へと目を移した。
偶然だった。
見つけてしまった。
彼を。
いつもの美琴ならすぐさま飛び出して、彼に突っ掛かっていただろう。
しかし、今日はそうする気分ではなかった。
原因は能力測定の結果。
なんとか前回の測定値をキープしたものの、自分が思っていた以下の出来だった。
自分は強くなりたいのに。
誰かを確実に守れるぐらいに。
そう、今瞳に映っている彼を守れるぐらいに。
彼には大切な人を守ってもらったから、自分はその恩返しをしたいのだ。
妹達に、黒子。
でも、それだけじゃない。
自分は彼の事が・・・。


「はぁ・・・。」


また、ため息をついてしまう。
こんな自分では彼に合わないと思ってしまった。
何回も彼に挑んだ。
しかし、負けた。
能力測定で良い結果が出せなかった。
こんな自分では、彼の傍にいる事なんて、できない。
落ち込む美琴の横顔がガラスに映る。
真夏の太陽が光り、ガラスを鏡にした。
それがまるで、彼と美琴を隔てる壁のようだった。
壁がある。
彼と自分の間には越えられない壁が。


「・・・ぁ。」


彼が不意にこちらを向いた。
美琴と彼の目線が絡み合う。
彼は嬉しそうに微笑み、手を振った。
そして、こちらへと向かってくる。
ガラス越しの美琴へと、彼は手を差し出した。


「・・・お姉様、いってらっしゃいな。」


少し、むっとした声で黒子が言った。
美琴は慌てて振り向く。
しかし、黒子はそっぽを向いたまま何も言わなかった。


「・・・うん。」


美琴は思わず微笑み、頷いた。
そして、一目散に外へと駆ける。


「・・・はぁ、私もお人好しですわね。」
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