禁書CP3

□雨の中の笑み
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「不幸だー。」


今日も今日とて、当麻は同じ言葉を呟いてしまう。
先程まで晴れていたのが嘘のように、スーパーから出ようとした途端、雨は降り出した。
傘は当然のごとく、持っていない。


「買ったもんが濡れるのは嫌だけど、仕方無いっか。」


そう言って当麻は雨の中へ駈け出そうとした。
しかし、不意に頭に過ぎったステイルの笑み。
あれが見たくなくて、当麻は買い物に出かけたのだった。
当麻は駆け出そうとして踏み出した一歩を、元に戻した。


「雨が止むまで、待つか。」


どうせ通り雨だ。すぐに止むだろう。
スーパーの出入り口付近の雨が当たらない場所に立ち、当麻はぼんやりと周囲を見回した。
雨の中を駆けだす者。
天気予報を見てきたのか、折りたたみ傘を出して差す者。
当麻と同じように雨宿りをしている者。
迎えを頼むのか、携帯電話を取り出す者。
いろんな人が当麻の目の前を過ぎて行く。
ふと、思い立ち、当麻は携帯を取り出した。


「・・・誰も、いない、か・・・。」


携帯をかけて、迎えに来てくれる人なんて。


「誰がいないんだい?」


不意に聞こえた声に、当麻は勢い良く顔を上げる。
そこには、ローブやマントと同じ色、黒い色の傘を差した彼がいた。
一瞬、幻覚かと思ってしまった。
それがあまりにもタイミングの良すぎる登場だったから。
迎えに来てくれたらいいな、と思った人。
それがステイルだったから。


「どうしたんだい?そんな呆けた顔をして。」


ステイルの呆れた声に、当麻は我に返った。


「あ、いや、ステイルが迎えに来るなんて、思ってもいなかったから・・・。」


動揺して、つい本音が出てしまった。
案の定、ステイルは眉根を寄せて、少し怒った表情をした。


「そうかい?まぁ、僕もインデックスに頼まれなかったら、君の迎えなんかに来なかっただろうけどね。」


ステイルはそう言うと、当麻にもう1つ持っていた傘を押し付け、当麻が2つ持っていたスーパーの袋を取り上げた。
そして、そのまま雨の中を歩いて行く。


「あ、待てよ!」


本当に、待ってくれ。
当麻は慌ててステイルを追いかける。
心臓が痛いほど締め付けられるのを無視して。
嫌だったら、迎えなんかに来なくても良かったのだ。
自分の事など、放っておいてくれても良かった。
どうせ、雨でずぶ濡れになるか、雨が止むまでずっと待ちぼうけでいたか。
それだけなのに。
不幸な当麻だ。そんな事はしょっちゅうで、慣れている。
だから・・・。
そんな優しくしないでほしい。
迎えに来たり、袋を片方持ってくれたり・・・。
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