禁書CP3

□雨の中の笑み
4ページ/5ページ

「なぁ、ステイル。」

「ん?」


当麻が呼びかけ、ステイルが立ち止まる。
俺の事、どう思ってる?
嫌い?好き?
嫌いなら、なんで優しくしてくれる?
好きなら、インデックスより?


「・・・ありがとな。」


当麻は全ての疑問を心に仕舞って、微笑んで、一言だけ言った。


「・・・・・・。」


その一言でなぜか、ステイルの顔が歪んだ。


「君はそんなに僕に迎えに来られるのが嫌だったのかい?」

「は?え、おい!」


踵を返して、ステイルは早足で進み出した。
なぜ、そうなるんだ?


「無理して笑って、お礼なんか言わなくてもいい。嫌なら嫌と言えばいいだろう?」


ステイルの声が、なぜか、泣きそうな声に、聞こえた。
違う。
違う。
本当は・・・。


「違ぇーよ!!逆に嬉しすぎるからだよ!!ステイルこそ、俺を迎えに来るのが嫌だったんだろ!!」


当麻は思わず叫び、ステイルのローブを掴んだ。


「だから・・・俺は・・・。」


当麻の声が徐々に沈んでいく。
嬉しすぎて、自分が期待しそうになるから、それを抑えて、無理に笑ったんだ。


「うれ・・・しい?」


ステイルの小さな呟きに、当麻は伏せてしまいそうになった目線を上げる。
唖然としたステイルの顔がそこにあった。
当麻は思わず、笑みを浮かべてしまった。
たぶん、その笑みはステイルがインデックスに向けたような穏やかな笑み。
どうやら、自分は期待してしまって良いようだ。


「ああ、すっげー嬉しかったぜ!」


今度は本当に笑って、当麻は言った。


「え、あ、と。」


当麻の突然の豹変についていけなかったのか、ステイルは目を瞬かせる。


「・・・ステイル、ありがとな!」


そんなステイルに、当麻は満面の笑みで礼を言った。
本当に嬉しいと心からの笑みで。


「・・・っ!」


その笑みにステイルの頬が真っ赤に染まった。


「そ、そうかい?じゃあ、もっと有り難がって、夕飯も美味く作りたまえ!」


ステイルは当麻から顔を背け、早足で進み始めた。


「待てよ!」


当麻はそれを慌てて追いかけるが、その顔は笑っていた。







不意に当麻は空を見上げる。
不幸だと思った雨が、今は幸せの雨に見えた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ