禁書CP3
□kiss of trick
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「Trick or treat?」
不意に言われた言葉に目を見開く。
朝から遊びに来ていたステイルだが、現在午後3時。
今まで、何も言わなかったのに。
「えーと、ステイルさん?」
当麻はその英語の一言におそるおそる口を開いた。
「お菓子の一つも買えない程に財産事情がひっ迫しているわたくしに、どんな悪戯をしたいのでしょうか・・・。」
「おや、持ってないのかい?」
ステイルが確信犯的な笑みで、こちらに迫ってくる。
そんな笑みもエロい感じで素敵なんですが、と当麻は思うが、何をされるかという恐怖の方が大きかった。
たぶん、今まで何も言わなかったのは、当麻がお菓子を持っていないかを見極めるためだろう。
そして、ステイルは確実にお菓子を持っていると思うので、当麻は何も言わなかった。
否!言えなかった。
「じゃあ、悪戯をして良いという事だね。」
クスクスッと怖い笑みで近付いてくるステイル。
当麻は思わず後ずさるが、狭い部屋だ、すぐに壁にぶつかった。
「ステイルさん?許してくれないでしょうか?」
「ダメだ。」
最後の抵抗も無残に切り捨てられてしまった。
間近に迫ったステイルに、当麻は冷や汗を掻く。
そして、ガッと胸倉を掴まれる。
もしかして、殴られる!と思い、当麻は思わず目をつむった。
途端に額に柔らかな感触。
「はい、悪戯は終了だよ。」
そして、その言葉と共に、手が離された。
「・・・・・へ?」
思わず間の抜けた言葉を出してしまう。
なざなら、さっきステイルがしたのは明らかに・・・。
「でこちゅー・・・。」
「じゃあ、そろそろおやつにしようか?今日はパンプキンスコーンを焼いてきたんだ。紅茶を淹れるから、冷蔵庫のスコーンを温めてくれないかい?」
ステイルは当麻の呟きには無視して、勝手にキッチンへと向かった。
「って!来て早々冷蔵庫に入れたのは、それだったのか!」
朝の出来事を思い出し、当麻は声を上げる。
「・・・自信作さ。」
少し悪戯っぽい笑みで、ステイルは言った。
当麻は思わずその笑みに見惚れる。
「じゃあ、すっげー楽しみだな!」
そして、ワクワクとした心で、ステイルと一緒にキッチンに立つ。
「ありがとな。」
礼を言うと、ステイルは顔を赤くして、そっぽを向いてしまった。
「なぁ、お礼のキスしていい?」
「・・・それは、尋ねてからするものじゃないだろ。」
「では、遠慮なく。」
ステイルの顔を引き寄せて、当麻は軽くキスを送った。
「ハッピーハロウィン!」