禁書CP3

□Fire flower
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「・・・はまづら。」


ここはとある病院。
カエル顔の医者がいる、あの病院だ。
そこに1人の少女が入院していた。


「ん?」


その少女の見舞いに来ていた浜面と呼ばれた少年は返事を返した。
少女は窓の外へと向けていた顔を彼へと向ける。


「花火が見たい。」

「・・・はぁ?」


少女、滝壺理后の唐突な言葉に浜面は間抜けな声を思わず出してしまった。


「花火って・・・季節はずれにも程があるだろ・・・。」

「夏はいろいろと、ゴダゴタしてたから、見れなかったと、思って。」


滝壺は再び、窓の外へと目を向けてしまった。
今は10月。
秋晴れの爽やかな空がそこには広がっていた。


「去年は、見たんだよ。」


滝壺の目が寂しそうに細められる。


「花火、皆で。」


浜面は思わず全ての動きを止めた。
呼吸や鼓動まで止まってしまったのではないかと思う程の硬直。
なんて彼女は優しいんだろう。
何でこんなにも優しい少女が学園都市の裏側なんかにいたんだ。
滝壺は悲しんでいる。
『アイテム』のメンバーが死んでしまった事に、大怪我をしてしまった事に。
もしかしたら、花火が見たいと言い出したのは、捧げたいからなのかもしれない。
死んでしまった『アイテム』のメンバーに。
もしかしたら、あの戦い巻き込まれた他の奴らまでも。
まぁ、それは浜面の考えすぎだとは思うが。
ただただ、楽しかった思い出を思い出したいだけなのかもしれない。


「しかし、花火って言ったってよぉ・・・。」


この時期にやる花火大会なんて、ないに等しい。
もしあったとしても、浜面たちは学園都市から出る事ができない。


「ごめん。無理、言った。はまづらは、気にしなくてもいい。」


滝壺は浜面へと向き直り、首を小さく横に振った。


「また、待てばいい。来年まで。」

「・・・まぁ、そうだけどよ・・・。」


浜面は釈然としない面持ちで滝壺を見る。


「来年、一緒に見よ?」


しかし、そう言った滝壺の淡い微笑みに何も言えなくなってしまった。
浜面は、ただ頷くしかできなかった。
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