禁書CP3

□Magic of holy night
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4章 White Christmas


当麻は向こうで怒鳴るインデックスを無視して、携帯を切った。


「君は・・・ルーテル教会の者だね。」


ステイルは油断なく彼女に目線を向けながら言う。
その口調は疑問でなく、断定。


「そう。だって私はフィンランド出身だからね。」


彼女はクスクスと面白そうに笑い、当麻たちを眺めてくる。


「ルーテン教会はフィンランドの国教だよ。私がルーテン教会の者でも不思議はないね。」

「通りで、行為義認の教えを『どっかの宗教では善行により、救われるらしいしね。』って言ってくれる。」


ステイルは皮肉下に笑った。
彼も行為義認については信じていないようだ。
いや、信じていないというよりは、自分にはそんな真似は無理だと、諦めている・・・?
当麻にはそう感じられて、チクリと心臓が痛むのを感じた。


「まぁ、そもそもおかしいとは思っていたよ。行為義認の解釈が君は違っていたからね。行為義認の行為とは禁欲の事だからね。世間一般の善行を指してはいない。」

「でも、貴方達は騙されていなかった?」


彼女がクスリと笑う。


「魔術には婉曲が付き物だからね。可能性は排除しておくに限る。」


彼女の言葉をステイルは肩を竦めてさらりと受け流す。


「・・・だからステイルは何も言わずにインデックスを行かせたのか・・・あの術式がフェイクだって分かったから。」


当麻はステイルの鋭さに思わず感嘆の息を吐いてしまう。


「いや、可能性は五分五分だった。行為の祖語に違和感を感じただけだったからね。だけど、君の言葉を聞いてフェイクだと確信したよ。」


当麻が言ったのが、なぜキリスト教の者がキリスト教の教えを他人事のように言ったのか。
彼女はフィンランド出身ではないか。
それだけだ。


「行為義認を教える敬虔主義がルター主義に対抗するために作られたという事は覚えているかい?」

「あ、確か神裂が言っていたな。」


当麻はなんとか思い出し、頷く。


「そして、彼女が所属するルーテン教会はルター主義なのさ。」


ステイルの言葉に当麻は驚き、彼女を見る。
自分の所属する教会の主義に対抗するために作られた教えなど、他人事に決まっている。
だから、彼女はあんな風に言ったのだろう。
当麻はキリスト教の多種多様性に改めて驚いた。
主義一つで教えがまったく違うのだ。
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