禁書CP3
□君は何を観たい?
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コーヒーが切れたという理由で、一方通行はコンビニへと出かけた。
そろそろ新しい商品にしようかと、陳列棚をぼんやりと眺めていると、声がかかった。
「お、一方通行じゃん。偶然じゃん!」
振り返ってみると、そこにはとある高校の教師、黄泉川の姿があった。
面倒な奴に遭ったと、一方通行は顔をしかめる。
「そう、顔をしかめなくてもいいじゃん。今日はれっきとした理由があって、君に声をかけたじゃん。」
理由、という黄泉川の言葉に一方通行は首を傾げる。
表の世界にはもう戻らないと言う事は何度も話した。
それ以外に黄泉川が一方通行に声をかける理由など、思いつかない。
「じゃん。」
そう効果音をつけて、黄泉川が取り出したのは映画のチケットだった。
よく見ると、それは駅前の映画館のフリーパスのようで、今やっている映画なら何でも見れるというものだった。
「福引で当たったじゃん。しかも、ペアチケットだから、2名様までOKじゃん。一方通行、一緒に行くじゃん?」
「なンで、俺なンだよ・・・。」
「・・・他の人、皆忙しいって断れちゃったじゃん。」
「そうかよ・・・。」
それにしても、と一方通行は思う。
他の人皆に断れたと言っても、一方通行を誘う理由がない。
それが顔に出たのか、黄泉川はニコッと笑った。
「私は案外、君の事を気に入ってるじゃんよ。映画を誘いたいと思うぐらいに。」
黄泉川の言葉に軽く驚く。
口調が教師が生徒に向けるものではなく、一人の人間が、一人の人間へと、言う感じだったからだ。
「で、今度の日曜日にでも行くじゃん。その日しか私は空いてないじゃん。」
「あー、じゃあ、無理だ。俺の方に用事がある。」
「むー、残念じゃん。」
落ち込んだ様子でそう言うと、黄泉川はチケットを一方通行へと渡してきた。
怪訝そうに黄泉川を見やれば、彼女はニコリと笑った。
「本当にその日しか私は空いてないじゃん。だから、一方通行にあげるじゃん。」
「いいのかよ。」
「使えない人間が持ってても、意味がないじゃん。」
それもそうだと、一方通行は頷き、素直にチケットを受け取った。
任務の入っていない日以外はだいたい暇なのが彼だ。