禁書CP3

□小さな一時
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(私は、なぜここにいるのであろうか?)


部屋の隅にある椅子に足を組んで座っているウィリアムは不意の疑問を覚えた。
ここはバッキンガム宮殿の修復が終わるまでの仮の政治執行場所である。
仮の場所、と言ってもバッキンガム宮殿には劣るが、十分に立派で豪奢な場所だ。
そこの第三王女の執務室に、ウィリアムはいた。


(・・・なぜなのであるか?)


ウィリアムの目線の先には、この部屋の主である第三王女ヴィリアンがいる。


(先の戦いでこっ恥ずかしい台詞を騎士団長に頼んで残して去ったばかりなのであるぞ!しかも、あやつの事だ、さらにこっ恥ずかしい台詞へと脚色しているに違いないである!)


それが原因でウィリアムはまともにヴィリアンと話せない状況にいるのであった。
一方、ヴィリアンは雑務に追われているのか、ウィリアムの方を見ずに書類の方ばかり見ていた。
漫画のように机の上に積まれた大量の書類。
今日中に終わらせなくてはいけないのか、忙しくペンを動かして、書類に何事かを書き込んでいた。
その姿はさまになっていた。
昔なら書類仕事もわたわたと余裕なさ気にしていたが、今では落ちついて仕事をしている。


「・・・私がここにいて、仕事の邪魔になるようでしたら、出ていくのですが・・・?」


一生懸命に仕事をしているヴィリアンの集中力を欠いてはいけないと思い、ウィリアムは椅子から立ち上がりかける。


「いいえ!邪魔になど、なりません!」


しかし、思いのほか強い否定の言葉が返ってきて、ウィリアムは仕方がなく再び椅子に座りなおした。


「む、むしろ、貴方に居て貰った方が、仕事がはかどります・・・。」


小さく頬を染めて言うヴィリアンを見て、ウィリアムは小さく困った顔をした。
そう言われてしまっては、出ていく気も起きないのだが、なぜだか分からないが、落ちつかない。


(これもあやつに会ってしまったのが運の尽きであるな・・・。)


どうしてもイギリスで行わなければならない事ができ、このロンドンに訪れたウィリアムだったが、街でバッタリと騎士団長に会ってしまったのだ。
そして、一方的にウィリアムは暇だと決めつけられ、ここに連れてこられてしまったのだ。
街中で暴れたりして目立つわけにもいかず、ウィリアムはここまでついてきてしまった。
その結果がこれである。
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