禁書CP3

□咲いた恋心
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「な、ない、と、ないとりーだー・・・。」


普段では考えられないような、戸惑いが多いに含まれた呼びかけに、騎士団長は軽く驚いた様子で、彼女を見た。


「き、貴様は私を裏切ったわけだし、罰を与えなくてはいけないの。」


頬を赤く染めて、言い訳じみた様子で、しどろもどろと言葉を繋ぐ彼女。
先のクーデターの首謀者とは思えない程、その態度はおろおろとしている。


「すみません、キャーリサ様。今はロンドン市内の復旧を優先させるべきでありまして、」

「そんな事は、分かってるし!」


どうにか言い逃れようとするが、キャーリサの大きな声に遮られてしまった。
騎士団長はジッとこちらを見つめてくるキャーリサに、どうしようかと考え込む。
兆候はあったと思う。
たまにキャーリサが自分を見る瞳が熱っぽい時があった。
しかし、自分には他に好きな人がいるため、その瞳には応えられないと、いつも避けていた。
意外に恋愛には奥手なキャーリサなので、その状況が今まで続いてきていていたが、それが今日崩れた。
第一王女、リメエアにでも、今がチャンスだとでも吹き込まれたのだろうか。


「・・・こ、これは!」


キャーリサの声に少し悲痛な叫びが入った。
この続きは言わせてはいけないと、騎士団長は直観した。
彼女の思いに応えられないとはいえ、彼女は自分が忠誠を誓った人でもある。
憎からず思っているのは、当たり前だ。
続きを言わせたら、絶対に傷つける。


「分かりました。」


だから、騎士団長はキャーリサの言葉を遮った。


「罰を受けましょう。」


その言葉を聞いて、キャーリサはホッとした笑みを見せた。
フワッと花が咲くようだった。
軍事のお姫さまと呼ばれている彼女はいつも険しい顔をしている。
この笑みを見たのは、いつ以来の事だろうか。


(・・・騎士、失格だろうか。)


彼女の笑みがこんなにも美しい事を忘れていたなんて。


「今日、私に付き合うの。それが罰だ。今から30分後に、駅前の噴水にくるよーに。恰好はラフなものにする事。」


そう言い残すと、キャーリサはこの場を去ってしまった。


「・・・はぁ。」


騎士団長はため息をつくと、廊下を駈け出した。
自分が不在の間の指示をなるべく出しておかなければいけない。
たぶん、今日一日は罰として、彼女に拘束されてしまうだろうから。
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