鬼灯の冷徹

愛を込めて
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「鬼灯…なんですか、それ…」
「バレンタインチョコです」

2月の業績アップと獄卒のストレス解消にと企画してみた節分バレンタインなのですが、なぜか大量にチョコレートを抱える羽目になってしまった。
きっかけは以前お会いしたイワ姫さんが渡してきたからのようですが、まったく…。

「バレンタインって確か現世の好きな相手にチョコレートを渡すっていうのですよね?」
「ええ。ハニートラップの可能性も否めませんので、あまり獄卒同士での受け渡しも控えてほしいのですがね」
「そうだったんですか」

しょんぼりとした雛の頭を撫で付けていると、ちらりと視線が送られてきた。
私と同じ黒い髪。
さらさらと梳くようにするりと落とす。

「雛…貴女、もしかして妬いてます?」
「えっ!別に…そんなことは…」
「同じ台詞をちゃんと私の目を見て言ってみなさい」
「う…あの…その…」

屈んで小さな雛の目線に合わせて、じっと見つめると袖を掴んでもじもじしながら俯いてしまった。
もう婚約して一緒に暮らし始めて数十年と経つのに未だ羞恥心を秘めた行動を可愛らしいと思う私は相当彼女に参ってしまっているようだ。

「あの…」
「はい?」
「実は、私も…その…用意してるんですけど、だめ、ですよね?」

ああ、そういう事か。
私が先に「獄卒同士の受け渡しは控えろ」と言ってしまったから渡しづらくなったのか。

「確かに獄卒同士では控えてほしいですが、私としては婚約者から何もないのは寂しいのですがねぇ」
「あ、あります!ここに…」

たっと駆け出し、向かった先は私の机。
引き出しをごそごそと漁って、手に持っているのは黒い包装紙に赤いリボンでラッピングされた箱。
…というか、何故、私の机に隠していたのか。
果たして隠す気があったのかどうかも怪しいですね。

「開けてもいいですか?」
「えっ、今…ですか?」
「はい」
「笑わないでくださいね」

笑われるようなモノを作ったのでしょうか。
なるべく綺麗に包装紙を剥がし、開けると歪な形のトリュフが6つ。
手作り…ですか。
1つをひょいと掴んで口に放り込む。
ただのトリュフかと思いきや、ふわっと鼻から抜けるアルコールの香り。
洋酒…のようですが…。

「美味しいです」
「…本当ですか?」
「はい、私の好みに合わせてくださったんですか?」
「あ…せっかくだし、鬼灯様はお酒がお好きだし、ただのトリュフよりいいかと」
「雛…」

ぐい、と引き寄せ腕の中に閉じ込める。
本音は恐らく緩んでしまっている締りのない顔を見られたくないからだ。

「ありがとうございます。好きですよ、雛」
「鬼灯様…」

見上げてくる雛が愛おしくて、唇を寄せた。
慣れたように目を閉じて受け入れてくれる彼女。

お返し、楽しみにしていてください。



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バレンタインでしたので。
間に合わせた感が
否めませんがお許しを(汗)

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