長編
□魔界の空
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冷ややかな空気が二人を包む。砂漠の夜は少し肌寒い。
ましてやここは魔界。
日中、陽が射す量も以前と比べればかなり少ない。
「寒くないか?ルーク。」
「ああ。大丈夫だよ。ありがとな。」
そう言って無理に笑顔を見せるルーク。
そんな取り繕った笑顔など、ガイの求めるそれではないというのに。
「ありがとう、か…おまえ、本当に変わったな。」
「ん…うん…。特におまえには、今までいっぱい迷惑かけてたな…。ほんと、ごめんな。ガイ…」
「やめろよ。俺は今までおまえの事を迷惑だなんて思ったことはないぜ。」
そうだ。今思い返せば、仇であるルークに、負の感情を抱いたことはなかった。あんな傍若無人だったルークにさえ。
世話好きなガイには、我が儘を言いつけられるのが心地良いとさえ感じられた。
人と人の相性とは、そういうものなのだろう。
「ガイは優しいもんな。誰にでも…」
「そうか?俺は別段意識してはいないがな?」
「優しいよ。…優しすぎて…つらい」
誰にでも平等に向けられるその優しさを、独り占めしたくなった時もあった。
復讐という二文字を心にしまい、その太陽のような笑みを向けてくれていたかと思うと、いたたまれなかった。
それなのに我が儘放題をしていた自分が、恥ずかしい。
自然に歩みは止まり、ルークはその場に立ち尽くした。
「ルーク…。おまえ、気にし過ぎだ。俺がもういいって言ってるんだから、いいだろ?もう、おまえとこれ以上ギクシャクしたくない。頼むから…」
「ガイ…ごめん。」
そういうルークの目には涙がたまっていて。
気が付いたら、ガイはルークを腕に収めていた。
「ガイ…」
自分を包むガイの腕は震えていた。
「謝るのは俺の方なんだ。俺は復讐に捕われて何度もおまえを傷つけた…!」
「…仕方ないよ」
「違う!…違うんだ。俺は…!」
言いかけた言葉を、飲み込む。
俺は、おまえを愛してる──
「ガイ…」
目の前にいるのに。
ここまで出かかっているのに。
それでも、躊躇せざるを得ない。
亀裂の入った関係が、その言葉によってどう転ぶのか。
二人は暫く見つめ合い…言葉を無くしていた。
魔界の闇の中でも、ガイの瞳も、その端整な顔も、輝きを失わない。
目眩がしそうだった。
「ガイ…俺、怒ってないよ。ガイのこと好きだし…大事な仲間だと思ってる。でも…なんかさ」
「…何だ?」
「前とは違うんだ。何ていっていいかわからないけど。」
ルークが抱いている想いは、紛れもない恋心。
当事者はそれに気が付かないものだ。
まして子供同然のルークには、自分の気持ちがうまく整理出来ない。
分かるのはただ、ガイに対する想いが、前とは少し違う、という事だけだ。
だが、不安を抱くガイにはその言葉にまた不安を煽られることになる。
「…違うって…?」
「…ん〜、俺変なこと言ってる?」
…無知とは罪だ。