ピオジェ
□光
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彼が死んだと聞いたとき。
世界は闇に包まれた。
自分を取り残し、無情に時は流れた…
『光』
「本当か!?あいつは…あいつは確かに生きてるんだな!?」
「はい。タルタロスの修理に、ケテルブルクに寄ったそうです。…陛下の信じた通り。ジェイドは生きているようです。」
ケテルブルク知事、オズボーン─ジェイドの妹であるネフリーが、生還を伝書鳩で伝えた。奇跡とも言える吉報に、マルクト軍高官は、共に歓びを噛み締めた。
皇帝ピオニーは、ただ一人ジェイドの生存を信じて疑わなかった。
大切な親友であり、想い人である彼を。
年甲斐もなく溢れ出そうになる涙を堪える。
想いの力を、信じずにはいられなかった。
こんな感動を、何と表現しようか。
言葉とは時にもどかしいものだ。
だが、愛しの彼と再会した時に、一番初めに使う言葉は…もう決まっている。
グランコクマ。
何と、美しいことか。
軍に居た頃は、景観を堪能するような余裕はなかったが─。
久しぶりに足を踏み入れたグランコクマで、ジェイドは自分が確かにここに存在している、と再認識する。
「…感動…してるんですかね、私は。」
こんなふうに思う感情が、自分にまだあったとは。
「おかえりなさい、カーティス大佐。どうですか、久々の帝都は。」
若き将軍、フリングスに迎えられ、宮殿へと足を向けた。
「陛下が首を長くしてお待ちですよ。…おわかりでしょうけど。」
少しクスリと笑うフリングスに、いつも自分の頭痛の種である皇帝の様子が目に浮かぶ。
旅立ちの前日から、形式上では恋人同士である。
きっと毎日の様に暑苦しい発言をしていたのだろう。
ジェイドは苦笑いして、宮殿に足を踏み入れた。
「…我ながらバカなことをしたものだ…」
だが、嫌に思ってない自分がいることも確かだ。
どうかしている。