裏小説
□ヒメゴト
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「俺、音機関部のメンテしてくるわ」
それが、合図だった。
『ヒメゴト』
浮遊機関アルビオール。音機関好きには堪らない、空を飛ぶ機械だ。
いつも、大陸間を自由に往き来するのに大活躍してくれるマシン。
ガイは音機関に詳しいということで、メンテナンス係りを買って出ていた。
長い飛行区間の時には、こうして何度か足を運んでいたのだ。
アルビオールに搭載されている音機関はモーターやらエンジンやら、どれも凄まじい轟音を立てるものばかり。
当然、誰も好んで近づかない。
パイロットのユニフォームがそのまま作業着になったツナギを纏い、いつもの箇所をチェックしながら、弛んだボルトを閉め直していた。
そこへやって来たのが…。
「来たな、ルーク」
「ん……だって、来いって事だろ?」
「ああ…おいで。」
初めてメンテナンスに行った時だ。
物珍しさにルークがついてきた。
初めは興味深々な目で辺りを物色していたのだが、当然すぐに飽きてしまって。
つまらなさそうに項垂れるルークに、キスをした。
誰も見ていないから。
それが、始まりだった。
「おまえも好きだな…」
「な、何だよ…だって、あんときガイが……んっ…」
言い終わる前に唇を塞いだ。
舌を絡め、腰をたぐりよせる。
執拗な舌の愛撫に瞳を潤ませて、ぐったりとガイにもたれ掛かる。
いつもは誰も来ない場所。
見つかるかもしれないというスリルに、虜になっていた。
初めはキスだけだった行為は、回数を重ねる毎にエスカレートしていった。