裏小説
□雨垂れ
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外は相変わらずの雨。
雨は嫌いじゃない。
ずっと、閉じ込めておけるから──
『雨垂れ』
「ルーク!起きてるか?」
聞きなれた少し低い、深みのある声。
誘われるままにドアに近づき、ノブに手をかけた。
「ガイ。早かったな」
今日はデートの約束をしていた。
この春からガイは社会人。休みも少なくなり学生の頃のように頻繁に会えなくなり、はや3ヶ月。
季節は梅雨時を迎えていた。
俺は学生だから休もうと思えばいつでも休める。まだ大学も2年目だ。卒業単位には余裕がある。
休みが限られてる上に平日はヘトヘトになって帰ってくるから勿論会えないし。ガイが就職してからは会う回数も当然減ってしまった。
だから…たまに会う休日は、最高に嬉しい。
「今日もすごい雨だな。入れよ、ガイ。」
都内の大学に通うため下宿生活、花の独り暮らし。
幸い俺ん家は資産家で、金の心配はない。
独りでは広すぎるこのマンションに、ガイがいない風景が寂しい。
去年、お互い学生だったころは毎日のように一緒に居た部屋。
「相変わらず広いなー、お前んち。」
リビングのソファーに腰掛けながら少し濡れた髪をハンカチで拭いているガイも、学生時代から親元を離れ下宿している。
何度かガイの部屋にも行ったが、いくらガイがキレイ好きで掃除も整頓も行き届いていても、やはりワンルームは狭く感じてしまう。
でも。
「おれはガイん家の方がいいな。」
「?なんで?狭いし」
「だから、いいんじゃん。」
雨が一層激しく降りだし、バルコニーのアスファルトを叩きつけた。
うるさいほどの雨音が部屋まで響く。