お宝小説

□世界の幸せの代償
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空はいつも青く澄みきっている。
障気が出た頃はとても濁っていた。
でも、今は青く美しい。
空が再び青さを取り戻したのは二人の人間とレプリカのおかげだった。
たった二人で障気の中和──大量の第七音素はレプリカ達で代用した──をやってのけたのだ。

ただ、これは命懸けの大業であり、行使者もレプリカと運命を共にするはずだった。だが、二人は奇跡的に生き残り現在に至る。


♪─♪─♪─♪─♪


「ルーク……、体は平気か?」
「大丈夫だっつったろ?何ともないって」
「……そうか」

そう言った彼の瞳は悲しげで。ルークはその蒼い瞳に吸い込まれそうになった。

「ガイ……」
「俺はお前を信じてる。だから……」

───命を捨てるような真似は二度としないでくれ……!

その悲痛な声にルークは“本当の事”を言ってしまいそうになった。
でも、言って何が変わるというのだろう?知らなくていい事もある。
隠すのは辛いけれど……。

「大丈夫、俺はガイを置いていったりなんかしないから」

言うわけにはいかない。
これは愛する人を守るための嘘。いや、本当は自分を守るための嘘なのかもしれない。

「ルーク……」

それでも、彼はとても不安を隠しきれないようだった。


♪─♪─♪─♪─♪


見てしまった。
もう無かったことになんか出来ない。

彼の体の半分が


───透けている。


あの日から嫌な予感が止まらなかった。親友……いや、恋人の事を信じたかった。これは思い込みだと言い聞かせながら。

「……嘘だろ、ルーク。消えてしまうのか……?俺を……皆を残して」

当の恋人は疲れていたのか眠っていて。きっと起きても今の事は知らないだろう。
また、“嘘吐き”という仮面を被って生きていくのだ。だれも知らないと思い込んで。

「どうして、ティアとジェイドとミュウだけなんだ?」

ルークにはルークなりの考えがある。そう言い聞かせてきた。でも、仲間の二人と一匹は知っていて恋人である自分が知らないのは、不条理な気がした。

「……ルーク、俺は覚悟は出来ている。出来ればお前の口から言ってほしい」



それは残酷な事実だけど

それでも、俺は


♪─♪─♪─♪─♪


夢を見た

どこか遠くで世界を見下ろしている俺

あの青い青い空と一つになって

みんな、幸せそう

良かった……


あれ?

どうして?

どうして?

一番笑ってて欲しい人が


悲しそうにしているの?

みんな笑ってるのに

幸せそうに笑ってるのに

ガイ……




『ルーク……っ、俺は世界よりお前の方が大切だったのに』




え……?

今、何て?




『どうして、俺には……』




続きの言葉を聞くことは出来なかった。


♪─♪─♪─♪─♪


朝。
目覚めたルークは自分の手を確認しようとしたが、身動きが取れなかった。
ガイの腕の中にいる。いつの間にと思ったが、嫌ではなかった。

「ガイ、朝だぞ」
「うーん……良い匂い……」

すりすり。
ガイはルークに頬擦りをする。

「……ったく、人の夢ではそんなマヌケ面してなかったのに」


暖かな温もりは生という物を教えてくれる。


(もっと生きたい……!)


いずれ、消え行く運命でも。今、この時間を大切に生きていきたい。

「ルーク……朝か?」
「おはよう、ガイ」

ガイが寝ぼけているのを良いことに、ルークはガイの唇に自分の唇を重ねた。

「ルー……ク?」
「お、おはようのキス……じゃ、駄目か?」




これから先は意地張らないで

自分に素直になりたい


なあ、良いだろ?


fin.




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