お宝小説

□夏〜summer〜ガイルク編 一夜に翔る想いと願い
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〜むかし、むかし…、
    遠い昔の頃に
織姫星と彦星というとても幸せそうな恋人がいました。
二人はあまりの幸せさにお互いの仕事をするのも忘れ、
長い間遊び暮らしていました。

ところが、そんな二人を見かねた織姫の父親は大変怒り、二人の間に大きな河を
作って離れ離れにしてしまったのです。
恋人と引き裂かれた織姫は毎日彦星を想い、泣いていました。

そんな織姫の姿を見た父親は流石に可哀想になってしまい、年に一度、七月七日
のよく晴れた夜だけ、離れた恋人、彦星と会うことを許したのでした。



夏〜summer〜ガイルク編

 一夜に翔る
想いと願い


「なぁ…、ガイ?」
「ん、なんだ?」
クイクイと袖を引っ張るルークに口元に綻ぶ笑みを浮かべながらも振り返る。

事の発端は今からまだ数分前に訪れたルークの小さなノックの音だった。
遊びにきたルークの手には学習の一貫として与えられた小さい絵本が抱えられて
いて、読んでほしいと手渡された絵本の題名は『織姫と彦星』。俗に言う七夕の
話であった。


(懐かしいなぁ。)


小さい頃の時の記憶は大分薄れていってしまっているけど、自分もこうやって姉
上や母上に読んでもらっていた幸せなあの時が脳裏を過ぎっていく。
 『な〜、ガイ早く!』
もはや特等席となってしまった俺のベッドで絵本の代わりに枕を抱え飛び跳ねて
いるルークに
『分かった、分かった。』と、返事を返しながらベッドに腰かけた。

読み始めると先ほどまで跳ねていたルークは急に大人しくなり、枕を抱きかかえ
たまま横から覗きこんでいた。
チラリと横目で見るルークの横顔は自分が勉強を教えている時よりも真剣そのも
ので、食い入るように絵本を見つめる翡翠の瞳。


(これくらい勉強も真剣に なってくれればなぁ…)

悟られないように内心苦笑をするが、そんな苦労も満更でもないと思っている自
分がいる。


(まぁ、問題児ほど
可愛い…ってね。)

そんな自分に呆れながらも本を読み終えて今に至る。
「あのさ…。なんか、そのかわいそうな話だよな?」物語を聞き終わったルーク
は少しだけしょんぼりしているようだった。
「そうか?」
「うん。」
子供心にもそう感じたのだろう。
けど、成長すればするほど考え方というのは変わる訳で……。
「ガイは思わないのか?」「……まぁな。自業自得だろうし。けどハッピーエン
ドだったんだから良かったじゃないか?」
「はっぴィ…、えんど?」「幸せになれたって事だよ。」
そっか、と納得するがイマイチ腑に落ちない顔をするルークの頭をポンポンと軽
く叩くと、ふとあることを思い出した。


(あっ、そういえば……)

今日ペールからもらったアレをサイドテーブルの引き出しから取り出した。
「ルーク、これ、あげるよ。」
それは色がついた細長い紙。
「なに、これ?」
「短冊っていうんだ。これに願い事を書いて高い所に吊すと願い事が叶うんだよ
。」
迷信と言えど、夢を与えるには十分だろう。
「願い事いくつでもいいのか?」
「いいんじゃないか?
あまり多すぎちゃ、叶わないぞ?」
「分かってるよ!早速書いてくる!ガイ、ありがとう。じゃあね!」
笑顔で走り去るルークの姿を目で追いかけていた。

(…ありがとう、か。
全く、人の気も
   知らないで……)


その翌日にルークの部屋へと続く窓に一枚の細長い紙がヒラヒラと風になびかれ
ているのが目に入った。


 (………あれは。)


 それは紛れもなく昨日渡した短冊。


(……あんなにデカイ字で    書いて……。)


けして綺麗とは言い難い字なのだがそこには……。


[ガイとずっと一緒に
いられますように]
『屋敷の外へ、いつか
  出られますように』
二つの願い事が書かれていた。
ちっとも公爵家の生まれとは思えない素朴な願いに少しだけ笑いが溢れてしま
う。………だけど、

(いつか、本当に
叶えばいいな…。ルーク)

一つ目の願いはまだ、叶えてあげられるか分からないけど、……せめて二つ目の
小さく書かれた願いくらいは、いつか叶ってほしいと思う。
まだ芽生え始めたばかりの友情に賭けて…。
―――――――――――― 「………ぁ」
(そういえば、そんなこともあったなぁ…)
「ん、どうしたんだ?ガイ。」
ついさっきまで楽しそうにしていたガイが急に黙りこんでしまった。なんか考え
込んでるみたいでちょっと心配になった。
「ん?いや、な。空を見上げたら昔のこと思い出したんだよ。」
「……昔って。」
「いいから。
 ほら、空、見てみろよ」何故かはぐらかされて仕方なく空を見てみると、星が
まさに川のようになっていた。
「すっげぇ…」
あまりの早大なスケールにそれ以上の言葉が見つからず馬鹿みたいにポカンと口
を開けたまま見上げていた。
「天の川っていうんだ。そういやルーク、お前初めて七夕の話を聞いた時のこと
まだ、覚えてるか?」
「ん〜、少し。うろ覚え程度だけど。」
記憶の中を探索してもあまり思い出せない。唯一、憶えてるのはガイから貰った
短冊に自分なりに頑張って書いた願い事。
「じゃあ、自分が短冊に何書いたかは憶えてるか?」「それはバッチリ!でも教
えないぞ!言ったら叶わなくなるからな。」
本当はそれだけが理由じゃない。あの頃はガイ以外に仲良い奴なんていなかった
から…、だから『ずっと一緒に』なんて書いたんだけど…。
今言ったらあまりにも
恥ずかしすぎて立ち直れなそうかもしれないから。
「そうなのか?十分に願い事、叶っているように思うんだが……」
「……………え?」
なんか、今すっごい意味深なセリフが聞こえたんだけど……。
「そうだなぁ。当ててやろうか?まず、一つ目が、俺とずっと「わーわー!!ス
トップ!ストップ!っつーか、なんで知ってんだよ!」
予感的中…。ヤバい、絶対今顔赤いかも。
「知ってるっつーか、見えたんだよ。」
「見るなバカ!大体そうゆうの普通は見ても黙ってるもんだろ?」
「ルーク、顔が真っ赤。」 「あー、煩い!煩い!」 う〜、バカやろ〜。
恥ずかしくて死にそう。
 楽しそうに横で笑っているし!
 穴があったらマジで入りたい。
「そんなに怒るなよ、
  悪かったからルーク」「本当に悪いと思ってるか?」
「思ってる、思ってる。」……
………
……………まぁ、いいか。惚れた弱味というのは
   恐ろしいと思う。
たった一言だけで
許せてしまうんだから。それくらいベタ惚れしていて、今更こう言うのもなん
だけど
「なぁ、ガイ。今更こんなこと言うの変かもしれないけど、俺、今でもお前の事
大好きだから。
…だからこれからも
一緒にいてくれないか?」今まで、ガイが大事にしてくれていたのは分かってい
たけれど、今日は恋人が年に一度の会瀬で想いを伝えあう日だから…、今日まで
の想いと願いを素直に伝えたかった。
照れ臭くて視線をずらしたままだったけど、貴方の大きくて優しい手が頭をポ
ンポンと叩くその仕草が数年前のあの日と同じで
「俺の方こそ…。
お前がいてこその俺だから。
…愛している。
ずっと一緒にいよう」 「うん。」
でも、ただ一つ違うのは
あの頃と今の自分達の距離。
これから先、これ以上
 二人の距離が離れぬようそっと新たな願いを
  星にかけた。

そんな互いに笑いあう二人を
見守るかのように遥か遠くで淡く輝く二つの星が瞬いていた。

《いつまでも笑顔で
いよう。
例え、離れても
はぐれたその手を
  掴みに行くから…。
溢れ出る涙を拭いに
必ず迎えに行くから。

だから泣かないで
僕らはいつも一緒だから》


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碧海さまよりいただきました!なんてお優しい方…!!
ルークがめちゃ可愛いしガイも優しさがあふれててもうこれぞガイルクって感じのほんわか小説でくろののテンションあがりっぱなしでした!!
本当にありがとうございました!!サイトご開設時には必ずなにかお返しいたします!(^O^)/


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