長編
□忘却の光
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「俺はガイと言います。よろしくお願いします、ルークお坊ちゃん」
「ガイ…?」
眩いほどに蒼く光る時代。そんな時が…俺にもあったんだ。
『忘却の光』
「俺は降りるぜ」
「ガイ!?どうしてだ?」
レプリカを置いて外殻大地に戻ってきた俺たちは、仲間の…信じられない一言を耳にした。
いや…そんな予感はしていたが。
「ガイ!あなた、ルークの親友でしょう。本物のルークはここにいますのよ」
「…本物のルークはこいつだろうさ。でもな。おれの親友のルークは、あのバカのほうなんだよ」
…ガイ。俺の幼なじみ。いけすかないメイドや従者の中で、おれが唯一心を許していた存在。
…おまえは、知らないだろうがな。
もう、10年も前のことだろうか。ルークのオリジナルである俺は、当然、バチカルの屋敷にいた。ヴァンに剣術を習い、当たり前のようにナタリアがいて、そして…ガイがいた。
優しかった。他の、誰よりも。一緒に遊んだり、一緒に学んだり、一緒に風呂に入ったり…。
楽しかったんだ。誰よりも、おまえと居る時間が。
人はこんな風に、誰かに依存するものなのだと、教えてくれた人だった。
それをおまえに…レプリカなんかに奪われた俺の気持は、おまえには解らんだろうなあ、レプリカよ。
全てを奪われた俺は…生きるのが苦痛だとさえ感じていた。
残酷に時は押し寄せ…流れる。
あの時狂った歯車は、もう元には戻らない。
「よろしかったのですか、アッシュ。」
「…ガイがあいつを選ぶのはわかってたさ」
「おや、こちらのルークもガイがお気に入りでしたか」
「……」
そう、ガイ、おまえは…あいつを選んだ。そしてきっと…もう戻ることはないのだろう。
瞳を閉じれば、蘇るあの日々。
あの日閉じ込められたのは、おまえだけじゃない。
おれの想いも一緒に……。
「二人のときは呼び捨てにするんだぞ!それと、敬語もナシだ」
「わかりました…いや、わかったよ、ルーク。」
「ガイ!これ…」
「…なんだ?」
「誕生日だろ…おまえに、やる」
「…ありがとう、ルーク」
「まあ。ルークはガイのことが好きなのね」
アオクヒカルジダイ…
「ちっ…」
10年の想いは、今なおおれの中で鮮やかに蘇る。
もう、戻ることはないのに。
焦がれていた光。
この手を離れ、己の亡霊に吸い込まれた。
与えられたのは苦痛の日々という暗闇にそびえる監獄。
月日を重ねるごとに、けして光へは届かないと知る。
…それでも…俺は光を探している……。