長編

□底 (裏注意)
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カースロット。それに侵された者は、術者の意のままに操られるという。


その本当の意味を…俺はまだ知らなかった。




『底』





「ガイ!?カースロットか!?」
アラミス湧水道からダアトへ向かう途中のことだった。もうダアトまでは目と鼻の先だ。




何度かイオンから『カースロット』という単語を耳にしていた。

そのたびにガイは誰かに操られるかのごとく俺に襲いかかってきた。
まるで、亡者のような目をして。

ガイを狂わせる…忌まわしき単語。


「ルーク、大丈夫?」


心配したティアがルークの元に駆け寄った。
仲間が、自分に襲いかかるという事実を目の前に、いくら操られての事とはいえ、ルークの心身を案じてのことだった。



「ああ…まだ近くにシンクがいるかも…気を付けないと。」


ガイが初めて俺に襲いかかったのはケセドニアだったか。

それから何度か、こうして襲われる羽目になったんだけど…。
ガイが、俺に襲いかかるなんて、正直…ショックだった。
いくら操られてるとはいえ、今まで自分に付き従っていた親友が、自分に…刃を向けるなんて。


俺たちはとりあえずガイを安静にさせ、回復を待つことにした。





「う……ん」


「ガイ!気がついたのか?」

正気を取り戻したガイは、ゆっくりと身を起こす。


「ルーク…俺、また…」

「気にするなよ、操られてるんだろ?それに、おまえにおめおめと殺られる俺じゃないって!」

「はは…そうだな。」


そういうガイの顔には、憂いが漂っていて、反省の念と俺への申し訳なさでいっぱいということが、嫌でも伝わってきた。

「ルーク…すまない。本当に…」


それだけで、充分。


ガイを安心させるために、
せいいっぱいの笑顔を作る。






ガイが、俺を殺そうとする。

操られているとはいえ、その事実が、俺にはひどく悲惨なものに感じた。

不安?怒り?



……そんなものじゃない。




俺は、心の奥底では、きっと…



俺たちはダアトに着くと、囚われていたイオンとナタリアを救出し、タルタロスの停泊するダアト港へ向かった。

時間も遅かったし、そこで一夜を過ごすことにした。


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