長編
□疑惑
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ルーク。
おまえが好きだ。
……愛してる。
『疑惑』
「ご主人様?元気ないですの〜。どうか、したんですの?」
「ん、ああ…なんでもない!それより、早く出発しようぜ!」
タルタロスに乗り込み、崩壊寸前のセントビナーを救うため、グランコクマを目指す。
様子が、おかしかった。
朝起きて、普通に挨拶を交わす。それすら、違和感を感じていた。
ルークのことなら誰よりも把握しているつもりだ。
心の機微まで、手にとるようにわかる。
確かに、何かを隠している様子だった。
──気掛かりは、夜の記憶がないこと。
俺は確かに、港へ足を運んだはずなのに。
気が付いたら朝だった。
まさかとは思うが、また操られて……。
一抹の不安が過るが、足を止めるわけにはいかない。
俺たちはダアト港を後にした。
タルタロスの中は、ひんやりしていた。無機物に囲まれた冷たいこの部屋は、負の感情を沸き立てる引き金になる。
あの晩。
俺は、自分の気持ちに気が付いたんだ。
俺は、ルークが好きだ。
今まで気付こうとしなかった。
見て見ぬ振りをしてきた。
いつか壊してやろうと誓った仇の息子に、こんな想いを抱いてはならない。
だが。誰が、自分の気持ちに嘘が吐けようか。
気付いてしまったら、最後。
溢れ出す想いは、今まで押し込めていたエネルギーを一気に放出し、俺の心を支配する。
抑えつけていたぶんの反動は、凄まじいものだった。
あれから、四六時中ルークのことが頭にこびりつき、眼を閉じれば顔が瞼に焼き付き、片時も自分の心から離れない。
心がはち切れそうな、どうにかなりそうな、こんなどうしようもない感情。
好きは嫌いの裏返しとはよく言ったものだ。
真逆の感情のはずなのに。
どこか似ている。
あの、激しい憎悪。
衝動。
「好きって……辛いな。」
正直な感想だった。
ましてや、いつもと違う態度。もしかしたらまた、カースロットによって傷つけてしまったのではないかという、不安。
「……一人になるのはやめよう…」
とりあえず一人きりの部屋から離れた。