短編

□特別な「好き」
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「ルークは、ガイのことが好きなの?」

突拍子もないことを、ぬいぐるみを背負った少女が聞いてきた。

「好きかって?そりゃ…好きだけど…」
「違うよ〜、そうじゃなくて〜。じゃあ、私のこと好き?」
「…うん?好きだけど?」
「じゃあ、私を好きな気持とガイを好きな気持って違う?」


…あまり考えたこともなかった。
俺がガイのことを好きなのは昔からで。
当たり前になりすぎてたから。



好きだけど、違う好きってなんなんだろう?

でも確かに、どこかでガイのことだけを特別に思ってる自分がいる。
旅をしてからは仲間が増えて、二人きりになる時間も減った。
それを寂しいと思ったりして…。
ガイは変わらず近くに居てくれるというのに、この変な喪失感。
アニスは何か知ってるのかな。


「お、いいところにガイが来たよ〜。じゃあ邪魔者はここらで消えるね。
がんばれ〜7歳児!」

「何なんだよ、ったく。」

「どうかしたのか?ルーク」

気づいたらガイがすぐ近くまで来ていた。

「あ…うん、何でもない。」

やばい…アニスが変なこと言うから意識しちまうよ。

「ん?どうした?顔が赤いけど…熱でもあるのか?」

ガイはいつも俺にしてたように、自分の額を俺の額にあわせてきた。

ガイの額はちょっとひんやりと感じられて、自分が熱を発しているのがわかる。

ガイのにおいがする。
…吐息がくすぐったい。

いつもしてきたことなのに、なんだか妙にこっ恥ずかしい。

マンガで見たことあるけど…このままキスするってシチュエーションがあったっけ。
…って、何変なこと考えてるんだ俺!

「かなり熱いぞ、大丈夫か?」

ガイは俺の体温と脈を測るために、首筋に手をかけた。
…なんかもう、ダメだ!そんなことまでされたら俺…!

もうたまらなくなって、乱暴にガイの手を振りほどいた。

「だ、大丈夫だって!あんまり触るなよ!おかしくなるだろ!!」

酷いこと言ったと思うけど、顔から火が出そうで、逃げ出したかった。ガイの前から。
気づいたら走り出していた。


「何なんだ?いったい…。ちょっと心折れそうだぞ俺…」

いきなりわけもわからず触るな、とか言われて、ちょっとヘコんだガイのもとに、一部始終をこっそり見ていたアニスが登場した。

「やっぱりね〜、アニスちゃんのにらんだ通り〜」

少女は目を光らせ、上目づかいで顔をにやっとさせた。

「ガイ〜、お幸せに〜。」

「どこが幸せなんだよ…」



ガイへの好きは特別。

ちょっとだけそれに気付き始めた日のはなし。





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