短編
□スパ☆バケーション4
1ページ/2ページ
ケテルブルクは夜を迎えていた。
月に照らされた雪が淡く輝く幻想。こんな月夜だからこそ。
今夜は外さないぜ、ルーク!(ちょっと予定外があったけど…)
「ルーク、ちょっと寄ってかないか?」
食事を終え部屋に戻る途中、ホテルのバーで軽く飲まないか、と誘ってみた。
雰囲気のいい大人の世界で、一気にこのガイ様の色気でノックアウトさせてやろうという魂胆だ。
「へー、俺こういうとこ初めてだな〜。なんか落ち着かねー」
キョロキョロと辺りを見渡すルークの手を取りスマートにエスコート。
小さいカウンターの端に席を決めると、マスターにオーダー。
「マスター、こいつにりんごジュース。俺はテキーラサンライズを頼む」
なにそれ?と不思議がるルークに、来てからのお楽しみ、とウインクして見せた。(我ながらイカスぜ)
暫くしてテーブルにジュースとカクテルが静かに置かれた。
「うわっ、ガイの、すげーきれいな色だな!」
「飲んでみるか?」
少しだけ酔わせた方が計画が楽に進むのは目に見えている。
テキーラはキツイ酒だが、少しくらいならちょうどいいだろう。
「う〜?ジュースみたいでうまいな!」
「大丈夫か?お前酒飲むの初めてだろ?」
「ん〜、ちょっと気持ちよくなってきたかも…」
キタキタキタキタ!
ばっちし計画通り!
頭を揺らすルークにべったりとくっ付いてみる。
案の定、抵抗は無し。
超いい感じなんですけど!
「ふい〜?」
「これ、ルークの髪の色みたいだろ?だから大好きなんだぜ。」
とある地方の朝やけをイメージしたこのカクテルは、赤から黄色へと、美しいグラデーションが特徴。本当に、長かった時のルークの髪の色そっくりだ。
そう解説しつつ、ルークの髪を腕で包むようにくしゃっと撫でる。
「へへ…なんか、照れるな!俺のりんごジュースも、ガイの金の髪の色みたいできれいだよな〜」
ルークはそう言いながら、俺の髪の毛束を少し手に取る。
少し、酔いのせいか、頬を赤らめながら。
…はっきり言って、うまく行きすぎなくらいいい感じだ。
このままベッドまでいちゃいちゃしながら行きつければ言うことなし!
地球に生まれて、よかった〜!!(地球じゃないけど)
屋敷にいたころの思い出話をしながら、時々ルークの頬を撫でてやると、ふにゃっと甘く顔が綻ぶ。
暫くして、ルークの眼がとろんとしてきた。
「ん〜、俺眠くなってきた…」
「そうか、じゃあ部屋戻ろうぜ」
よろつくルークの腰を抱き、部屋へと戻った。
…ここまでは、恐ろしいくらい順調だ。
あの変な色のアイス、気のせいだったようでホッとした。
鍵を開け、ルークをベッドに座らせた。
「大丈夫か?お前がそんなに酒弱いとは知らなかったよ。ごめんな、飲ませたりして」
「ん〜ん…楽しかったからいいよ…」
えへへ、と笑いながら俺にもたれかかる。
正直、理性崩壊寸前だ。
「ガイ〜…昔みたいに一緒に寝るか〜?なんてな〜」
その時、俺の中で何かが崩れる音がした。
気がついたら、ゆっくりとルークの体をベッドに寝かせて、その上にまたがるようにルークを見下ろしていた。
「ほえ?ガイ…」
お前が悪いんだぜ、ルーク…。
「ガイ〜、俺なんか胸が苦しいんだけど…」
それは華麗なこの俺にフォーリンラブなハートが悲鳴を上げているのさ!
ふ、とルークの胸元に目をやると…
「…ん?」
なんだか、明らかに丸く膨らんでいる。
「苦しいんだよ〜服が…」
よく見ると胸のボタンがはち切れそうだ。
これはもしかして、いや、もしかしなくても…!
「お前!体が女になってるぞ!!」
間違いない!
絶対あのアイスだ!
あの鬼畜メガネ!やっぱり仕込んでやがったか!!
…なんてこった、うれしいような…さみしいような…
「ゲ〜〜〜!!!!!どうしよう!!ガイ〜!!俺女になってるじゃねーか!!まじかよ〜最悪!!」
ショックを隠せないルークは一気に青ざめて涙目になっている。
「落ち着け、どうせジェイドの実験か何かだ。あいつなら元に戻せるだろう。…女のルークも可愛いよ…」
悩殺スマイルで頭を撫で、涙をぬぐうと、ルークは少し落ち着いたように大人しくなった。
…あわよくばこのままいい雰囲気に持っていって…
まあ、初Hが女のルークでもルークはルークだし、それはそれでいいかも…
…って!
「はうあ!!」
なんてこった!忘れてた!!
「俺もアイス食べたんだった!ぎゃー!!やっぱり!!」
見事に俺も体が女性のそれになってしまっているではないか!
「ガイもか?…しょーがねーな〜ジェイドを探すしか…
「なんてこった!!これじゃあルークのかわいい●●●に俺の猛った●●●突っ込めないじゃねーか!!!!」
……!!
しまった!!
つい、本音が…!!!!!
恐る恐るルークを見ると、まるで化け物を見るような顔でこっちを見ている。
……終った……。
「おまえ…もしかして男ならだれでもいいってやつ…?」
「ちがう!違うぞルーク!!決してそんなことは!!」
「おやおやおや、ちょうど良かった」
かちゃりと扉の開く音がして、鬼畜ロン毛眼鏡が入ってきた。
「てめえ!!!!!!何がちょうどいいんだ何が!!」
すかさず掴みかかると、俺の腕につかまれたまましれっとしゃべりだした。
「いえね、あなたがピオニー陛下に想いを寄せているようでしたので、いっそ女性になってくれたらと思ってアイスに薬を忍ばせたのですが…手違いでルークまで食べてしまったようですね。まあ、ルークは後で直してさしあげますからそれはいいとして、あなたにはお妃になるためのプリンセス教育を受けて頂けねばなりません。さ、連行しなさい」
パチン、と指を鳴らすとうしろに控えていたマルクト軍がぞろぞろと出て来て、俺を取り押さえた。
「やっ、ヤメロ〜!ルーク、助けてくれ〜!!!」
「なんだ、そういうことだったのか。お幸せにな〜ガイ!!ちゃんと立派なマルクトクイーンになるんだぜ!」
「違うんだ!ギャーーーー!!!!」
結局陛下への誤解も解き、ジェイドに元に戻る薬を作ってもらうまでの1ヵ月間、ルークと離れ離れにされてしまった…。
ルークには、誤解されたままだ…。
FIN
落ちねーよ!