短編

□あの日の木漏れ陽
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「ふぇ〜ルークのお屋敷ってやっぱり広いよね〜」

バチカルのファブレ公爵邸。

その広さは一般人には計り知れないほどだ。
何度来ても慣れないその広さに、アニスは改めて感動する。

「まあ、王室の宮廷ですからね。本丸までの道のりが遠いことは一般論ですよ。」
「大佐ってば、ほんと無感動ですよね〜。アニスちゃん何度来ても感激しちゃうのに〜。」
「そうね…裏庭の森を入れたら、ユリアシティの半分くらいの面積はあるのかしら。」

ティアは辺りをきょろきょろと見渡した。
広さだけではなく、あちこちに置かれた骨董品や芸術作品を眺めては、通常ならばこんなものにもお目に掛かれないだろうと感嘆した。

「ああ、そうだな。広すぎて俺も最初はよく迷ったものさ。」
「そうですわね。そういえばルークもはじめ迷子になっていましたわよね…」
「ばっ、余計なこと言うなよ!」

昔の失態を暴かれたルークは焦ってナタリアを振り返った。

「そうそう。で、結局俺が見つけたんだよな。そんときお前泣いてたっけな」
「へ〜、そんなことあったんだ〜!何か、ルークとガイの過去って色々ありそうで面白そうだよね〜!ねぇねぇ、結局どこに居たの?」
「ん?ああ…裏の森のさ…な、ルーク!」

昔を思い出しながらルークの方を振り返ると、そこにルークの姿は無かった。
皆がガイの話を聞こうと気を取られてる隙に、どこかへ行ってしまったようだ。

「あれ?ルーク?」
「恥ずかしくなって逃げ出したんじゃないの〜?ルークらし〜い」
「もう、アニス!あんまりからかわないで!」
「へへ、ごめ〜ん」

いつもの他愛の無いやりとり。
こんな幸せな一瞬が、永遠に続けばいいのに。
そう思わせる昼下がりの出来事だった。









だが。




「…ルーク…どこまで行ったんだ?」

一向に戻ってこないルーク。心配性のガイは、ルークの事が頭から離れずにいた。
自然にそわそわし出す体に、皆が気づくのは言うまでも無い。
せっかく出されたお茶がもう温くなるほどの時間が経った。

「いけませんねぇ、そろそろ出発の時間だというのに。」
「ガイ、探して来て下さいません…あら?」

ナタリアが話しかけた時には、既にガイの姿はそこには無かった。





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