お宝小説
□大人の事情・俺の我儘
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ワイン工場も妙に気を使ってくれたジェイドと行動し、ガイと口を聞く事もなかった。
そのままモヤモヤした気持ちで旅館に到着する。
宴会は19時かららしい。
(…部屋で寝てたいな…)
部屋は今回一人一人分けられている。
やっとゆっくり出来た。
一人になると浮かんでくるのは先程のガイとのやり取り。
携帯を見るがメールも着信も無し。
…嫌われた…かなぁ…
もうお腹は良くなってる筈なのに。溜息しか出ない…
宴会場に集合し、ガイから逃げるようにジェイドの横でお酌ばっかりしていた。
「ルーク。」
「……またですか」
何故かオレンジジュースが1ケース来る。
デジャヴだ。
「なんでまたコレなんだよっ!!」
「いやあ。ルークはお子ちゃまですからね。」
「少しぐらいならビール飲めますけど!」
「色々と、ですよ。…正直な気持ちを言い合える仲なんでしょう?だったら不満や言いたいことをきちんと整頓して話し合ってみてはどうですか?」
「…う…。でも……」
子供…
確かに。子供だな。
ガイに理不尽な八つ当たりするし、意地張って無視して謝れない。謝り方が解らない。
ガイの方をチラリと見る……
(………あ。)
しっかり目が合った。
しまった!
なんで『しまった』とか思うんだ?
咄嗟に反らしちゃった。
嫌われたかな…?
向こうも呆れてるよ。
こんな奴面倒臭いだけだよな…
フラれる………。
「やれやれ。では頑張って下さいね。」
ジェイドに肩を軽く叩かれる。
「え?ちょ…何が?」
ジェイドは妙に笑顔で社長の所にビール瓶を抱えて行ってしまう。
「え…部長……」
「ルーク。ちょっといいか?」
ガイに背後から肩を掴まれた。
力が篭ってて痛い。
「……!ガイ、痛い!どこ行くの?ちょっ…!」
手首を掴まれて強引に宴会場から引きずり出される。
廊下を歩いてる時もガイは俺の腕を乱暴に引いていく。
途中何度か転びそうになり、浴衣がズレてくる。
その…ちょっと恥ずかしい状態でエレベーターに乗る。
密封された空間に2人だけ。
ガイは俺の体を壁に押し当てて怖い顔しながら近付いて来た。
「……!!」
「ルーク。ごめんな。」
いつの間にか固く閉じていた目をうっすらと開ける。
申し訳なさそうに微笑むガイが居た。
「…ジェイドと仲良くするから……妬いた。」
「えっ…?」
「ジェイドと…凄く仲良いから…俺、嫌われたかと思った。ジェイドに盗られたってさ……」
な…ないない!
そんな恐ろし…違う!ガイの事嫌いになるなんて…
「…俺こそゴメン…昼間あんな事言っちゃって…」
ガイは俺の顔を見て再度笑うと
「俺はお前しか見てないから」
と頭を撫でてくれた。
仲直りできた…。
よかった…
ガイの手は滑るように俺の頬に触れる。
長い睫毛が顔に触れるぐらい近付いて来て…
反射的に目を閉じた
チーン♪
「「!!!!」」
忘れてた。
エレベーターの中だった!!
他の団体の宿泊客のおじいさんが…何だか解ってるんだか解ってないんだか微妙な顔して入口で立っていた為、慌てて降りる。
「みられた…?」
「……かもな」
二人して別の意味で気まずくなったが…何だか笑えて来た。
「ルーク、俺の部屋行こうか」
「社長は?」
「ま、ジェイドが何とかしてくれるだろ?」
今夜は仕事とか付き合いよりもお前優先にするからさ。
翌日。
前にガイと二人で座る。
堂々と。
周りの社員達は気付いてるのか気付いてないのか余り干渉してこなかった。
ガイと居ると、ついついイチャイチャしてしまう
…1番怖かったアッシュの反応が…薄くてちょっと意外だった。
…というか。アッシュ…なんか昨日の昼から様子おかしいんだけど?
まいっか。
次の目的地は社長が行きたい行きたい駄々こねて決まった場所。
キングオブコースターで有名な遊園地。
「うわー!すげぇ楽しみなんだけど!」
「バスに酔う人間が何言ってんだ。…具合悪くなったらすぐに言えよ。心配だから…」
隠れた場所で繋いでくれた手。
俺らの日々はまた順調に続いて行くのだった。
「なぁ〜ジェイド。昨日のバスの席。なんで急にお前が決めたかやっと解った。」
社長はガイとルークをチラリと見る。
「そう来なきゃ面白くないでしょう〜はっはっは。」
「お前やっぱり鬼だな。」
「社長。知ってますか?昨日の温泉は1961年果樹園からある日突然、湧いて出たらしいですよ。」
「マジで!?」
【ガイルク編終了】