お宝小説
□内部事情・俺の純情
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サービスエリアで急遽予定を変更し、休憩時間を取る事になった。
まぁ…予定よりも順調に行き過ぎたし、この先の到着時間を調節出来るからこちらにとっても好都合だからまぁいいか。
待機中まで奴の面倒見る気にもなれず、ギンジと乗務員控室に向かう。
「もう〜…お客様に屑とか眼鏡はマズイっすよ…アッシュさん…」
「…………す、スマン」
ギンジはそうは言いながらも優しく微笑んでいた。
「ジュース、何が良いですか?」
「…りんごジュース…」
ギンジはいつも、いつでも俺にばっかり気を使う。
そんなに取っ付きにくい感じで見られてるのか…?
あ…いや、違う。
コイツはいつでも、誰にでもそうだった。
何だか…。複雑だな。
「ギンジ」
「何ですか?」
「……き、気を遣わなくていい」
ギンジは苦笑いし、りんごジュースを手渡して来る。
「別に気を遣ってるとか…そういうわけではありませんよ。アッシュさんにだけ特別なんです。」
「そうか…」
りんごジュースを噴きそうになった。
………それどういう意味!?
「アッシュさん。…疲れてませんか?大丈夫ですか?」
ボンヤリしてたと思われたのか。
ギンジは俺の顔を覗き込んできやがる!!
やっ!やめろ!!!
「顔が…真っ赤。疲れたんですか?」
まぁ大して間違ってないが…立って喋ってる俺よりも、全神経集中して運転してるコイツの方が疲れてるに決まってる。
控室の出入口のドアノブに手をかける。
「ったく…俺が、」
「好きなんだろ!」(←※声一緒)
「違っ!あっ…ちょっ!!」
(間)
何が起こった今…
『ったく…俺が、お前を心配するだろ普通。ずっと朝から運転続いてたからな。大丈夫か?…』と言おうとしていた。
うん。
……何?今の奴の声?。
「………!アッシュさん!!」
後ろを見ると真っ赤な顔のギンジ。
−「ったく…俺が『好きなんだろ!』」−
ああ成る程………
………。
……………あああ!!?
「!?い!今のは俺じゃねぇ!!!お!俺は!!その」
あのバカ!!
外で何叫んでやがる!!
しかもギンジ、俺が言ったと勘違いしてるぞ!
俺は…いや、俺じゃなくても普通、そんな自信満ち溢れた台詞言わない!!
「アッシュさん!!」
ガシッと凄い剣幕で俺の両肩を掴む。
ギンジの真っ赤な顔が迫って来る。
「…ギンジ!ちょっとまて!!ごっ…誤解……」
「そうです!オイラはアッシュさんがずっと好きでした!!」
「なっ………!!!!」
急展開に着いていけず、控室のベンチに引き返し座り込んだ。
こんなに疲れる仕事……初めてだ………。
ただ。
ちょっとあのバカに感謝しないこともない。
その頃。
バスの中では。
時間が過ぎても戻って来ない運転手と添乗員に…こういう時だけ何故か鋭い社長ピオニーが缶ビールを開けながら、
「ガイ〜なんかやたら休憩長くねぇか?……って何お前…苛ついてるの?」
…と何も知らずに疑問に思うのだった。
「あ……いえ……(…くそう……ジェイドの野郎……!ルークに待ってました!とか言わんばかりに近付いて…!!)」
結局。乗務員2名が戻らず、休憩が15分→30分になったという。