長編

□魔界の空
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「…今晩はここで休みましょう。いいですね、ガイ。」

「あ?ああ…」

砂埃舞う夜のケセドニアは、昼間とは打って変わって気温がさがり、肌寒ささえ感じさせる。
砂の海には蜃気楼のように月が浮かび、幻想的に砂の街を彩る。それがいつもの風景だが、外殻に覆われた魔界にそんな幻想は降り立たない。



「今日は各々部屋を分けました。支障があるようであれば、このままにしておくのは好ましくないと思いますよ。」


この眼鏡の奥は何でもお見通しだ。人の心を読む機能が付いてるのかとでも思わせるくらいに。

「…あんたにここまで心配かけちまうとはな。」

「まあ、個人の過失で終わる分には構いませんが、長引きそうですしね。旅に支障が出るようでは、見過ごせません。」

これがジェイドなりの思いやりなのだろう。


このチャンスを無駄には出来ない。
ガイはこの日ばかりは、いつもは少し煙たいジェイドの読みの深さに感謝した。






ルークとは隣同士、しかも他とは隔たった、廊下を曲がった角の部屋だった。
ここなら他のメンバーからちょうど見えない位置にある。不審と思われる事もない。
流石、切れ者ジェイドの采配だ。
ただ、楽しんでいるだけのような気もするが。



ガイはルークの部屋の扉を2回ノックする。



「ルーク。居るか?」



「あっ…ああ、ガイ。今開けるよ。」


少し躊躇いのある返事のあと、数秒を待って扉が開いた。



「どうしたんだ、ガイ?」




「いや、何って訳じゃないんだが。ちょっと散歩でもしないか?」


「あ、ああ…」



歩きながら、心をほどいてゆこう。


複雑に絡まった想いを。





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