短編

□スパ☆バケーション2
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ケテルブルクは万年雪に覆われている。
人々の心を奪う、見事な銀世界。
恋人たちが過ごすには申し分ない。



スパではしゃぎすぎ、少し逆上せ気味のルークは、顔を赤く紅潮させまるで食べ頃の果実のようだ。


「はは、逆上せちまったか、ルーク。」


またもや下心を隠した紳士の笑みでルークに問いかける。


「ああ…頭がぼーっとする」

「少し外で冷ますか?」


「うん…」




そんなこんなで外へ連れ出した。

空は丁度夕陽の朱に染まり、雪を優しく輝かせる黄昏時。

雰囲気はバッチシだ。


「きれいだなー。風、気持ちいいし」


「そうだな。見ろよ、周りカップルだらけだぜ?」


「ふーん、この時間狙って来るのかな?」


まあ、かく言う俺もその口だが。


少しずつ郊外に離れて行き、人気のないところで雰囲気が最高潮に達したところが勝負だ!
その為の下調べもばっちり、抜かりはない。
もう、言うセリフも決めてきたんだ。自分で仕込んだイベントフラグもたててきた。

ルーク…今夜はお前を腰砕けにしてやるからな!



「あ、なんかここから見ると綺麗に見えるな〜、夕陽。」


邪なことを考えながらも、ちゃっかりと狙っていたスポットに到着。


夕陽を見つめるルーク。


翠の瞳が輝いている。
幻想を見ているかのようなルークの表情。

雰囲気最高潮。


…今が勝負だ!


オーバーリミッツ!

覚悟しな!




俺は横に並び、そっとルークの手を握った。


「?ガイ…?」


俺は真剣な眼差しでルークを見つめた。


「ルーク。今日はお前に言いたいことがあるんだ。」


ここから3メートルほど離れた樹を指差す。



「あそこに、宝物が埋まってるんだ。掘り出してごらん?」


「え!?どの辺!?」


ルークは宝と聞いて目を輝かせた。


「樹の下の雪に埋まってるよ。俺はあっち向いてるから、手助け無しで探し当ててみな。見つけられたらそれ、やるから。」


「ほんとか!よーし、じゃあ探してくる!」


そこに仕込んだものは、裏に俺の瞳と同じ色をしたサファイアがあしらわれたシルバーの指輪。


「あった!開けてもいいか?」


「ああ、いいよ。」


ルークは無邪気に笑いながら包みを開けた。



「?これ…」



「俺の言いたいこと言っていいか?」



それは、ずっとずっと温めていた台詞。

「やっと、やっとこの想いを伝える時が来た。裏のサファイヤは俺の瞳の色。お前に持っていて欲しいんだ。俺の想いと一緒に…。永遠の愛の証、受け取ってくれないか」




よっしゃ!言った!言い切った!

こんなシチュエーションに落ちないやつなどいるものか!


これで完全にルークは俺のもの…!


「ガイ…困りますねぇ」



………?


余韻に浸っていると、ルークのものではないかわいさの欠片もない声が返ってきた。


「なっ…なんで」

こんの変態鬼畜エロ眼鏡野郎!何でこのタイミングで現れやがる!



「ジェイド!」

ほやっとした顔でルークはジェイドを振り返った。


「どうしてここにいるんだ?」


「いやあ、ここは私の幼いときの思いでの場所なんですが…タイムカプセルを掘ったら、こんなものを見つけたんです。」


「そっ…それは!何でお前が持ってるんだ!」


ジェイドが差し出した左手には、俺がルークのために用意した指輪が…!


「あ〜!ガイ、お前…何!?今のジェイドへの告白!?」


「ちっ、違…」

「まあ、少し戸惑いましたがあなたの気持ちは真摯に受け止めておきますよ。」



「違うんだーーー!」



「っつーか、なんなんだよこれ…」


ルークが見つけたものは、ジェイドがすり替えておいたマルクト皇帝15分の1フィギュア(レア全裸バージョン着色済み)だった。

(これがガイの宝物かよ…ジェイドにコクったし、あいつホモで変態だったんだな…でも、俺は親友として理解してあげなきゃな!)


ルークはにこにこと天使の笑顔でガイを見ていた。



「いやあ、ルークも祝福してくれてるようですし、お互いがんばりましょう」


「ルーク!おまえ、何か色々とものすごい誤解してないか!?違うんだー!」



ケテルブルクに夜が訪れようとしていた─。

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