Doll And Dolor
□Dos-Mentira
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「──部下を労る優しい上司か。惣右介も甘ちゃんだねぇ」
隊舎から出た瞬間、頭上からそんな声が聞こえてきた。緩慢な動作で上を煽ると、屋根の上にいたのは友人の内海だった。
赤い髪を靡かせた死神は無垢な笑顔を歩に向けると、実に軽やかな動作で彼女の目の前に着地した。
「ルキアのことは聞いたよ。ホント残念だったね」
「……だから? からかうために来たんじゃないんでしょう?」
「そうだね」
カラカラと笑いながら、内海は歩の鼻面を指差した。ぐっと顔を睫毛の触れあいそうな距離まで近づけた。
「ルキアのことで幾つか──僕の予想だけど、それでも聞きたい?」
「……どういうこと?」
「ルキアの行方不明は、バックで糸を引いてるヤツがいるってこと、かな」
「──ッな!?」
ギョッとなって内海を見ると、濁りのない瞳で見つめ返された。身体を離そうとしても内海は歩の腕を掴んで離さない。身体を動かすこともままならない歩に、内海は先ほどとは違い、口角のみをつり上げた無表情で微笑んだ。