Doll And Dolor
□Cuatro-Sangre
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「失礼します。日番谷隊長、に……雛森副隊長」
入室早々目に飛び込んだ自分自身の上司に、歩はわずかに眉をひそめた。
歩はどうしても自分の上司──雛森桃が苦手だった。正確には彼女の雰囲気、とでも言おうか。利他や理想を身にまとい、誰にでも微笑む姿は流石を通り越しぞっとする。化けの皮、とまではいかないにしろ、一枚そのベールを剥がしてしまえば、そこにあるものの得体が知れない。
「あ、歩さん!?」
どうしてここへ? と問いたげな雛森に軽く会釈をし、歩はちらりと問題の彼を見た。
そこにいるのは、銀髪で小柄の死神。
もちろん今の歩にとって、一番得体の知れないのは彼──日番谷冬獅郎である。
「何の用だ、笠寺」
いつになく声が低い。さながら今にも噛みついてきそうな猫、というところか。しかし所詮は猫か、と歩は心中鼻で笑う。
無論表情には微塵も出さず、しかし睨むように日番谷へ顔を向けた。
会釈なんて、誰がするものか。