Doll And Dolor
□Seise-Peine
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「何があったの?」
歩の言葉はいつもに増して攻撃的で、今にも噛みつきそうな猟犬のよう。
声より言葉より、纏う雰囲気ときつい表情で、ルキアをなぶるようだった。
もしくは、引きずり出すようだった。
一度空に視線を滑らせながら、ルキアは慎重に口を開く。
「……私は、人間に死神の力を渡した」
「……死神の力の、譲渡?」
まさか、と半田は呟いた。ちらり、と、歩とルキアに尻目に見られ、慌てて口をつむぐ。
なるほど、と半田は自身で納得した。
だからルキアは、優しくか弱いままに、極囚となれたのだ。
ぐっ、と歩はきつく右手を握った。
「なんで、人間なんかに力を渡したのよ」
「歩……」
「どうせ人間なんて、死神でいられる期間短いんでしょ? 放っておけば良かったのよ。何があったかなんて聞かないけど、放っておけばあなたは極囚にならずに済んだの!」
「……歩、お前なら、そう言ってくれると思った」
「っ……」
どこまでも穏やかなルキアの物言いに、歩はぐっと押し黙った。