銀魂book
□note.04
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「……まだあるのか」
「やっと半分よ」
note.4(後編)
かっぽん。
かっぽん。
同じリズムで同じ音を奏で続ける獅子威し。
この場の沈黙も相変わらずだが、ただ一人、唯一響く獅子威しにやられて船を漕ぐ者がいる。
「……よさねぇか近藤さん」
「え、何俺なんかしたじゅるっ」
「明らかに涎吸っただろ、今」
「して、お話はなんでしたか、お嬢さん」
「堂々の無視か」
長らくの沈黙を破ったのは真選組のほうだった。
華を模った和菓子は表面が少し乾いてきている。
これから長くなる、とわかっているのだから、少しでも美味しさを逃がさないうちに食べるのが礼儀だろう。
そう思い竹製の楊枝で左半分を削いだ。
「てめーも無視か。悠長なもんだな」
「美味しいものは美味しいうちに頂くものでしょう。無粋ね」
「女は甘いモンでも食ってりゃいいんだ。それをこんなとこまでしゃしゃり出てきやがって。俺の分もくれてやるからとっとと帰れ」
三口で食べ終え、漆塗りの皿の上に楊枝だけが横たわっている。
「とっとと食べ終えたのでお話に移りましょうか」
「すみませんもうちょっと待ってください」
「………………」
向かって右に座っているのが、今日始めて会った局長の近藤さん。
体に似合わず、繊細な和菓子を繊細に食べている。
その左。
胡坐をかき、腕組みをしたまま不機嫌そうにしているのが、以前にも会った副長の土方十四郎だ。
たまにその腕を解いては、意外と綺麗な指先を口元にあてたりしている。そしてまた腕を組んでは、二の腕を指でイライラと叩いてみたりする。
分かりやすすぎる。
「いやあ、普段はあまり食べないのですが、和菓子というのもいいですな!な、トシ!」
「此方をご指定くださった副長様のおかげですね」
「………………」
偶然出てきた和菓子に懐柔されている大将を見て、額を押さえる。
そしてその手はまた口元へ。
すみません、と控えめな声を外に向ければ、すぐに仲居がやってきた。
細く開いた障子に、臙脂色の着物がちらりと見える。
「お茶を3つと、あと、灰皿を」
更に深く刻まれた眉間の皺は見ないことにする。