銀魂book

□銀八最後の日
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「これでこいつも見納めだな」

教壇に立ち、感慨深げにぼそりと呟くのは天パの担任。
ん?
担任の天パ?

天パ、だ。

「はいそこー。適当にしないー」
「適当は貴様のほうであろう、銀時」

そう言ったのは紋付袴の桂くん。

「卒業式だというのに、まるでいつもの……だらけた男ではないか」
「何で途中からマダ男の流れにもってった?何で?」

それだけじゃない。

卒業式だと言うのに、さっきの『見納め』発言は彼の手にある『糖分』の額に向けられていたのだ。

「やっと気付いたアルか。次は『酢昆布』にするネ」
「『おりょう』がいいのー」
「『お妙さん』!」
「『ストーカーゴリラに永遠の制裁を』」

授業よりも溌剌と発言する生徒達に、天パはいつも以上に生気のない瞳を向けた。

「もはや映画のサブタイトルみたいになってるよなんてベタなツッコミはしねーよおまえやれ新八」
「卒業式くらい無関係でいさせてください」
「俺教師辞めんだよねー」
「ふっといて話題かっさらわないでくださいよ!」
「黙れメ……ダメガネ」
「何で途中から略した?何で?」

天パは額縁を縦に立てて、両手を天辺にかけ、さらにそこに顎を乗せた。
額の高さが足りなくて、少し姿勢が悪くなる。

少し猫背になったときに、だらしなく開いた襟から鎖骨が見えるのがちょっと好きだったりする。

「俺こいつのお婿さんになるの。だから辞めんの」

は。

見つめていた襟元より手前に指が突き出て、そしてその指が差すのは。

それをたどったクラス全員の視線が集まるのは。

自分。

「え、ちょ、何」

聞いてない。


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