文
□紅い光が生まれては消え、
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「やめなさい」
静かな、だけれども怒りを多分に含んだ声に怯まずに、赤澤は観月の手を握った。
「いいじゃんか。誰も見てないし!」
「そう云う問題じゃありません。」
はなしなさい。
赤澤はぎゅうぎゅうと少し痛いぐらいの力で手を握っている。
観月の力では振り払うこともできない。
同じ寮の友人達がおもしろそうに遠巻きに見ている。
「あなたねぇ…一体何がしたいんですか?」
抵抗を諦め、呆れが混じった声に、
「別に…好きだからしたかっただけ。」
平然と言ってのけた。
「…恥ずかしい人ですねあなた…」
溜め息。
「…何があったか知りませんけど、別に今でなくてもいいでしょう。僕はなくなったり減ったりしませんよ。」だから、落ち着きなさい。
蠱惑的な瞳がおもしろそうに輝いている。
「観月、好きだ。」
「知ってます。」
この手も、この唇も、唯あなたの為だけに。
そんな言葉は、放たれる前に飲み込まれ、じんわりとした熱を生んだ。