SHORT
□何処までも二人で
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「お疲れ様」
『あ…お疲れ様です』
「うん」
音楽番組の収録を終え、すっかり寂しくなった静かな午後の屋上で
突然彼が笑い掛けてきた
細身のブラックデニムを履いて
何も見えなくなりそうな陽射しを抱いている其の姿に、軽く眩暈を覚える
「あのさ、さっき歌ってたの…新曲?」
『はい、来月に発売が決まってるんです』
「へぇ…そうなんだ」
私の隣
何処か遠い眼でそう語る彼、晋平さんは
昔、リュウと同じバンドを組んでいた時のメンバーで
私がトロイメライに入ったばかりの頃に出逢った内の一人だ
「リュウとは上手くいってる?」
手摺に凭れている私に一瞥を遣り
彼は何気なく、思っている疑問を口にした
「アイツが一人の女の子と向き合うなんて、俺の知る限り初めてだから…何か気になるんだよね」
気になるって……
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