Starry Sky

□まさかまさかの全力疾走
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「あいつ、どこ行った!?」
「宮地は足速いからなー。よし、あっち行くぞ!」
「おう!」

中庭の茂み。俺は咄嗟にそこへ身を隠した。
何故か追い掛けてくる犬飼達から逃げるためだ。
足音が遠くへ消えていった後、緊張していた糸を一気に緩めて、盛大な溜め息を吐いた。

(何なんだ…?)

犬飼達にモテるためにはどうのこうのと聞かれたが、正直知らない。
そう答えると、「そのかっこよさを分けろ」と追いかけ回されることになってしまった。

そして、現状。
ここまで所要した時間は、15分程である。

(あいつら、部活で覚えておけ…!)

怒り充分だが、今は身体を休めることが優先だ。俺は夏風を感じながら、その場に寝っ転がった。

青空にゆっくり流れている白い雲。
身体に感じる穏やかな風。
こんな風にのんびりとした時間を過ごしたのは、いつ振りだろうか?

たまにはのんびりするのも必要だ。
夜久や部長がよく俺に言ってくる言葉。
俺はいつも「必要ない」と答えているが、たまにはいいかもしれない。

そう思った刹那。


「宮地くん?」
「うわっ!…夜、夜久?」

今しがた思い浮かんでいた人物がひょっこり顔を出した。
きょとんとして俺を見ている。

俺は寝っ転がっているわけにもいかないので、上半身を起こした。


「何してるの?」
「あ、いや…休憩を…」
「休憩?」
「ああ、さっきまで犬飼達に追い掛け回されて…」


「また?」と夜久は笑った。その笑顔は、弓を引く時の凛とした顔付きとは逆で、花が咲いたように柔らかい。
俺の心臓がドキンと大きく鳴った。


「…夜久は何を?」
「私?私は食後の散歩。散歩してたら、宮地くんを見付けたんだ」
「そうか…」
「ねえ、隣いい?」
「え、あ、ああ。構わない」


二人で空を眺める。
言葉はない。
ただ、穏やかな時間だけが流れている。

けれど、俺はそうではなかった。
心臓がドキドキしている。

微風に流れる髪。
空をうっとりと眺める目。
少し口角が上がった口。

一つ一つに目がいってしまう。








ふと目が合った時
俺の心臓が
この日一番大きく鳴った。








(なあに?)
(いや、な、何でもない)









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